第1回東邦ピアノセミナー報告

第1回東邦ピアノセミナー報告

2007年7月26日(土) 会場:大塚キャンパス

全体会:
  • 「時代様式に基づいたピアノ演奏とは」 担当 : 國谷 尊之
分科会:
  • 「フィンガー・エクササイズ~指にできること、できないこと」 担当 : 砂原 悟
  • 「バッハ インヴェンションの指導へのヒント~創造的な楽しさを見つけるために~」 担当 : 中島 裕紀
  • 「ピアノアンサンブル~その魅力と演奏へのヒント~」 担当 : 田中 梢

レッスン

みなさまこんにちは。ピアノ科主任の春日洋子でございます。
本日は、去る7月26日開催致しました第1回東邦ピアノセミナー。そのご報告と御礼を申し上げたいと思います。
当日は162名というたくさんの方々が足を運んでくださいました。飛行機で駆けつけてくださった方もいます。本当にどうもありがとうございました。

私達はそれぞれの場面で日々研鑽をつんでおります。それを生かしながら教育現場におきましては、学生の指導に対していろいろなことに取り組んでおります。そのエネルギーを何かの形にあらわせないものかと考え、今回特に私達ピアノ科として目指す教育方針と、大きく関わりのある4つの講座を用意させて頂きました。
当日の流れは、午前中に全体会、午後から分科会としまして3つの講座を同時進行で開催しました。それからレッスンというあっという間の一日でした。
今日は全体会を担当なさいました國谷尊之先生、それから分科会を担当なさいました先生方を代表して砂原悟先生にいらして頂いております。当日の感触や手ごたえをお聞きしたいと思います。

それでは、全体会を担当なさいました國谷尊之先生にお話を伺いたいと思います。國谷先生は、「時代様式に基づいたピアノの演奏とは?」ということで、お話なさいましたけれども…100名近くの方がいらっしゃいましたが、いかがでしたか?

國谷:
第1回にあの882という大教室で行う予定だったものですから、実際蓋を開けてみたら何人ぐらいだろう。と心配でしたね。当日は入りきらないんじゃないかというくらい本当に大勢の方にいらして頂いて嬉しく思いました。ご来場頂いたみなさまありがとうございました。多くの真剣な眼差しが、私に注がれていて大きな責任も感じました。
春日:
そうですね。
國谷:
多くの方がメモをお取りになりながら、とても好意的に聞いてくださった様な感触でしたので、私もたいへん楽しんで進めることができました。時代様式に基づいたピアノ演奏というと硬いテーマかな?と題名を見て感じられた方もいらっしゃったかもしれません。東邦音楽大学・短期大学では、時代様式を生き生きと表現し、その中でいろいろなものを学び吸収して、そしてそれを卒業後、社会でみなさんに役立てて頂きたい、そういう思いで新しい世界の潮流を感じ取って頂くようなカリキュラムを目指して私たちも日々勉強しております。そういった胎動が少しでもみなさまに伝わればいいなと思って古い時代、バロックから古典の時代ベートーヴェンの時代を通って、今回ロマン派の時代まで曲をご紹介しながらお話をさせて頂きました。大学での授業というと難しい印象を持たれがちですけれども、どの時代の音楽も社会の中でそれぞれ息づいていたものでして、そういったことが実感的に味わえるように大学のカリキュラムも進めて行きたいと思っています。そういった現状を今回少しでも知って頂けたとしたら、大変嬉しいですね。また、バロック音楽というと当時の録音がないので、なかなか当時の音そのものを味わうのは古楽器に詳しい方でないと経験がないのではと思いますが、当日は砂原先生に演奏を披露して頂いたんですよね。

砂原:
クラヴィコードを運びまして、演奏を聴いて頂きました。本来クラヴィコードは音が非常に小さい楽器なので、大教室では音が少し聴きとれないんですけれども。100人ぐらいの環境ですとギリギリ音が届くかなと、またその小ささを感じていただくのに逆に良いかなと思いました。こちらもバロック音楽を勉強しながら当時の様子をなるべくお伝えできればなぁと、國谷先生の講座に参加させて頂いて演奏しました。多分初めて聴かれる方が多かったと思いますけれども…みなさんあまりにも音が小さかったので驚いていたようですね。
國谷:
そういう感想も頂きましたね。
春日:
音は小さいけれども微妙なニュアンスが、とても美しかったですね。
砂原:
そうですね。ピアノとはまた違う音色があって、また違う観点からピアノを弾きたくなるような。
春日:
やはり時代様式に基づくというのは楽器の変遷に大きく関わります。それを知るということも必要ですね。
國谷:
そうですね。特にバロック時代、古典もそうですけれども、何か感情を込めずにかっちり弾かなきゃいけないというような間違った理解が、ピアノから人々を遠ざけるような一つの原因になっているようですが、一方でクラヴィコードの演奏を聴いてみるとこんなにも表情豊かなのかと。当時の人々が本当に楽しんでいたということを実感できて、私も聴けて本当に良かったなぁと思いましたね。また、古典の時代に関しては、今回、ビデオを見て頂きながらほんの少しアナリーゼをさせて頂きました。アンケート等でもいろいろご意見を頂戴しておりますので、また今後に向けて勉強したいと思っております。
春日:
ありがとうございました。
春日:
それでは続きまして、テーマ別分科会を代表しまして砂原悟先生にお話を伺います。砂原先生は、「フィンガーエクササイズ~指にできること。できないこと~」というテーマでお話なさいましたけれども。
砂原:
卒業生の方々の声に耳を傾けると非常にピアノの勉強というのは深くて険しい山と言いましょうか、大変な勉強ですから、そこでいろいろな悩みがどんどん膨らんでいるなぁというのを感じました。それは卒業後も非常に熱心にピアノを勉強されている方が非常に多いんですね。その中でも指をどのように扱ったらいいのかという悩みが非常に多く聞こえて参りますので、その点を私なりの考えでございますけれども、そういう話題を提供してアドバイスができたらなと思って講座を設定致しました。初めに全体会で非常に大きな視点からピアノというものを眺めましたので、分科会では、もっと具体的に非常に細かいところを取り上げる、またそういう観点から講座を私の他にバッハのインベンションやピアノアンサンブルのような非常に実践的、具体的な講座を設定致しました。手ごたえは、この1時間半という限られた時間で言い足りないところもありましたが、みなさんの熱心さを非常に感じましたね。講座が終った後も個人的に質問される方が多く、講座の内容をしっかり把握して帰ろうという気持ちを強く感じました。
春日:
ありがとうございました。他に分科会は2つございました。1つは先生がおっしゃいました「バッハの指導へのヒント」これは中島裕紀先生が担当なさいました。バッハのインヴェンションの成り立ち、それから数あるエディションの比較、そして演奏法、アーテュキレーション、ディナミック等の楽曲分析をお話くださいました。バッハの指導といいますと我々多かれ少なかれ悩むことが多く、やはり砂原先生の分科会と同じように本当に聴講し、メモを取りながら熱心にお聞きになっていらっしゃいました。きっと沢山のヒントを得て帰られたことと思います。
そしてもう一つ「ピアノアンサンブル~その魅力と演奏へのヒント~」これは田中梢先生が担当なさいました。ピアノといいますと孤軍奮闘というイメージが強いのですけれども、やはり連弾・2台ピアノの分野というのも本当に必要であると考えます。大学・大学院におきましても力を入れている授業の一つですね。当日は大学院の学生2人の演奏で、実践的に呼吸の取り方、合わせ方、それから2人で曲を作るということをみなさん直に体感なさいました。また「ぐるぐるピアノ」という一つの曲を何人かで演奏するという大縄跳びのような…入ってきて、飛んで、出て行って、また次の人が入って…というリレー式の演奏法を体験して頂きました。参加なさったみなさん殆ど全員の方が参加しまして、自分の順番が回ってくる前の独特のドキドキ感や終ったあとの達成感をみなさん味わって盛り上がった講座になっていました。
春日:
その後、レッスンを行いました。砂原先生、國谷先生もレッスンを担当なさいましたので、お話をお聞きしてみたいと思います。まずは、砂原先生レッスンをいかがでした?
砂原:
私の担当した生徒さんは、実は普段レッスンに通ってらっしゃる方とそれからもう一人学校の先生をされている方でした。それでやはりみなさんおっしゃることは、仕事があって忙しく、なかなか練習時間が取れないことです。しかしその中を高いモチベーションもって、勉強なさっているのが非常に立派だなぁと私は感じました。レベルも高いものでこちらも気持ちを引き締めて臨みました。
春日:
國谷先生はいかがですか?
國谷:
私の担当させて頂いた受講生のお一人は、遠方石川県からお越しになっていました。また、なかなか練習時間がとれないとおっしゃっていましたが、かなりの難曲を完全に暗譜されていましたね。また別の方からは、このような機会を待っていたというお言葉を頂きまして、本当に開催して良かったなぁと思いましたね。今後もこういう期待を是非生かしていかなければならないですね。
春日:
私もお二人と全く同じ意見で、受講された方の中には普段、自分が生徒さんに教えている側、今回は自分が受けるということでそれなりの緊張感と何かを得たいというエネルギーをすごく感じましたので、ある意味では襟を正してレッスン致しました。他のレッスンを担当された先生方も同じようなことをおっしゃっていましたね。
アンケートもたくさんお寄せ頂きまして、本当にみなさん充実した一日を過ごしたという多くの声を聞かせてくださいました。私たちもそれなりの達成感を得たことを本当に嬉しく思っております。そろそろ第2回に向けて準備を進めているところなんですけれども、新たにいろいろ勉強し、また教育現場では学生と試行錯誤しながら、ピアノ音楽の素晴らしさを伝えていきたいと思っております。みなさま、今後共どうぞよろしくお願い致します。来年度は7月26日(土)に開催を予定しております。またお会いできますことを願っております。ありがとうございました。
PAGE TOP