畑中良輔ライブラリー

畑中良輔ライブラリー概要


平成30年10月7日開館
 故畑中良輔氏は長きに亘り、客員教授として本学に奉職された。2012年没後、ご遺族のご厚意により氏が 生前に所蔵していた蔵書など多くの資料のご寄贈を受け、「畑中良輔ライブラリー」として川越キャンパス図書館内に開設された。

 畑中氏は専門である音楽関連の書物を数多く所蔵しており、それらは西洋音楽の研究書・オペラの対訳集・楽曲解説書・オペラ公演のプログラムなどから日本の伝統芸能までと多種多様である。これらは今日でも読み継がれる名著から入手不可能な専門書まで及んでいる。

 バリトン歌手であった氏が所蔵していた楽譜は、国内版・海外版ともに声楽曲が多い。中には、直筆の書き込みのある楽譜や、中田喜直氏より贈呈された楽譜など希少な資料も収蔵されている。また氏が自ら監修した楽譜も含まれている。

 畑中氏が作曲家としても本格的に活動を始めた戦後、清瀬保二らによる「新作曲家協会」、柴田南雄と入野義朗らによる「新声会」など、いくつかの作曲グループが結成された。畑中氏がメンバーとなった「新声会」は、12音技法などヨーロッパの前衛音楽をいち早く取り入れた。のちに中田喜直・團伊玖磨・別宮貞雄などが加わり、活発な作曲活動を展開していった。本ライブラリーではその当時の写真・山田耕筰氏からの書簡・中田喜直氏への追悼文の原稿など、戦後日本の作曲界の実録とも言える資料を所蔵している。これら貴重な資料の一部は、複製にして展示している。

 また畑中氏が所蔵していた文芸書は、誰もが知るベストセラーから古今東西の文学集、謹呈された物も含む数々の詩集など多彩であり、氏の詩人・エッセイストとしての顔を偲ばせる。  中学時代から短歌や詩に親しんでいた氏は、文学少女の姉君を通して片岡鉄平や川端康成とも繋がりがあった。また東京音楽学校時代、堀辰雄の詩集を集めるために作者自身に手紙を送ったことをきっかけに親交を結び、それは堀が亡くなるまで続いた。本ライブラリーには近代日本の文学者と畑中氏の交流を窺い知ることのできる私家版の図書や資料も含まれている。

 さらに歴史全集、美術全集など蔵書の分野は多岐にわたり、生前の畑中良輔氏の知の源泉がいかなるものか知ることができるであろう。

 本ライブラリーが、畑中良輔氏の業績と併せ、氏の学識や人となりを知る一助となれば幸いである。

所蔵数

和書2598冊、洋書230冊、和楽譜1015冊、洋楽譜994冊、レコード1465タイトル、LD64タイトル
雑誌・紀要100冊、パンフレット520冊


畑中良輔プロフィール

畑中 良輔 1922~2012
(バリトン歌手、指揮者、作曲家、音楽評論家、教育者、詩人、エッセイスト)


東京音楽学校(現東京芸術大学)卒業、宮廷歌手ヘルマン・ヴーハーペニヒ博士に師事。リリックな声を持ち、その音楽的解釈力の深さと卓越した演技力は、デビュー当時から高い評価を受けてきた。二期会創設者の一人であり、オペラではモーツァルト歌手として第一線に立ち、「魔笛」の“パパゲーノ”、「フィガロの結婚」の“フィガロ”を始め、モーツァルトのオペラ本邦初演の主役のすべてをつとめた。イタリア、フランス・オペラでは、名歌手フェルッチョ・タリアビーニと「ラ・ボエーム」「ウェルテル」、ゲルハルト・ヒッシュと「ドン・ジョヴァンニ」などを共演し、オペラ史上に輝かしい記録を残した。
歌曲ではドイツ・日本歌曲に造詣が深く、特に日本歌曲のプログラムで全国縦断連続リサイタルを行い、啓蒙の役割を果したことは特筆に値する。
また作曲の面では、抒情的な歌曲作品が多く『畑中良輔歌曲集』が出版されている。評論の面では34年にわたり朝日新聞の音楽評や「レコード芸術」誌の新譜月評を執筆し、『演奏家的演奏論』『演奏の風景』『朝日試聴室』『オペラ歌手誕生物語(第55回日本エッセイスト・クラブ賞受賞)』『日本歌曲をめぐる人々』などの著書がある。
日本の合唱界にも力を注ぎ、1952年には職業男声合唱団「東京コラリアーズ」結成に尽力、また慶應義塾大学ワグネル・ソサィエティ男性合唱団を50年以上に亘って指導した。教育者としては弟子の多くのすぐれた声楽家が、日本はもとよりヨーロッパでも第一線の歌手としてオペラに歌曲に活躍している。
新国立劇場初代芸術監督、日本演奏連盟理事、全日本合唱教育研究会会長、藤沢市民会館文化担当参与、永年の日本音楽コンクール運営委員をはじめとする多くの役職を務め、文部省の教育課程審議会の重責をも担った。また、東京芸術大学名誉教授、東邦音楽大学客員教授を歴任した。
1985年紫綬褒章受章。1994年勲三等旭日中綬章受章。毎日音楽賞受賞。モービル音楽賞受賞。2000年文化功労者。2006年恩賜賞・日本芸術院賞受賞。2008年芸術院会員。


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