あらすじ・相関図

登場人物

主な登場人物相関図

  • アルマヴィーヴァ伯爵
  • アルマヴィーヴァ伯爵夫人
  • フィガロ:伯爵の従僕
  • スザンヌ:伯爵夫人の侍女、フィガロの許婚
  • ケルビーノ:伯爵の小姓
  • マルチェリーナ:伯爵邸の女中頭
  • バルトロ:セビリアの医師
  • バジリオ:音楽教師
  • ドン・クルツィオ:裁判官
  • バルバリーナ:アントニオの娘
  • アントニオ:庭師、スザンナの叔父
  • 花娘

あらすじ

第1幕 アルマヴィーヴァ伯爵邸の一室
伯爵の従僕フィガロは今宵、伯爵夫人の侍女スザンナと結婚することになっている。
フィガロは伯爵が結婚祝いに与えてくれた部屋で楽しげに家具の寸法を測っているが、スザンナは伯爵の魂胆を鋭く見抜いている。
伯爵はスザンナを我がものにするため、一旦は廃止した封建的権利(初夜権)を復活させようと目論んでいるのだ。
それを知って憤慨したフィガロは、できるだけ早く婚礼の許しをもらい、伯爵の企みを防ごうと策を練る。
しかし、そう簡単に事は進まない。
伯爵は日和見主義の音楽教師バジリオを手なづけ、また、フィガロに気がある女中頭マルチェリーナの計略を後押しする。
フィガロは昔マルチェリーナに借金をし、「返せない時は結婚する」と約束したことがあったが、マルチェリーナはその契約書を盾に、フィガロとスザンナの結婚をご破算にしようと息巻いているのだ。
フィガロに復讐したいバルトロもこの計略に加担する(前作《セビリアの理髪師》で、バルトロはロジーナ[今の伯爵夫人]との結婚をフィガロに邪魔された経緯がある)。
一方、小姓ケルビーノは、スザンナをはじめ、城内の女性という女性に恋をする思春期の少年で、なかでも伯爵夫人に恋焦がれている。
その彼がスザンナの部屋に頼みごとをしに来たちょうどその時、伯爵が部屋に入って来るので、ケルビーノは身を隠す。伯爵がスザンナに迫ろうとした所へ、バジリオが現れるので伯爵も慌てて身を隠す。
ところが、バジリオがケルビーノと伯爵夫人の噂話を始めると、嫉妬深い伯爵は怒って姿を現し、ケルビーノを城から追い出すと宣言する。
そこにフィガロが村人たちを引き連れてやってきて婚礼の許しを乞うが、伯爵はそ知らぬ顔ではぐらかす。
愛と陰謀が渦巻く中、「狂おしい一日」は展開していく。
第2幕 伯爵夫人の居間
夫の愛は去ってしまったと嘆き悲しみ、愛の神に祈る伯爵夫人。
フィガロとスザンナは伯爵夫人を助けて、伯爵を懲らしめる策を練る。
既にフィガロは、狩りに出た伯爵に、伯爵夫人の浮気をでっち上げた匿名の手紙が渡るよう手を打っている。
もうひとつの策は、スザンナが伯爵に逢引を約束し、そこに女装したケルビーノが現れるというもので、浮気の現場を伯爵夫人が取り押さえ、伯爵の不実を白日のもとに晒そうという計画である。
スザンナと伯爵夫人がケルビーノを女装させていると、突然、伯爵が狩りから戻ってくる。
ケルビーノは恐れおののいて衣裳室に隠れ、中から鍵をかける。
伯爵夫人の慌てる様子を見て、さては衣裳室に浮気相手が隠れているのではと疑う伯爵。
伯爵が衣裳室をこじ開ける道具を取りにいくために夫人を伴って部屋を出た隙に、スザンナはケルビーノを二階のバルコニーから逃がし、自分が衣裳室に入る。
一方、もう逃れられないと考えた伯爵夫人は、ケルビーノを女装させる計略のことを伯爵に話してしまうが、いざ戸を開けると、驚いたことに衣裳室から出てきたのはスザンナであった。
伯爵は混乱しつつも、妻を疑ったことへの許しを乞う。
その間に、女性二人は手紙の計略についても伯爵に洩らしてしまう。
そこへフィガロが現れると、伯爵は例の手紙についてフィガロに詰問する。さらに酔っ払いの庭師アントニオがやってきて、誰かが窓から飛び降り、花を台無しにしたと訴える。
フィガロは女性二人の助けを借りて、その場をうまく切り抜ける。
ところがその時マルチェリーナの一団が入ってきて、フィガロとの結婚の約束が法的に有効かどうか調べてもらいたいと言い出し、大騒ぎとなって幕を閉じる。
第3幕 城内の大広間
伯爵は今朝からの様々な出来事を思い返して訝しく思っているが、もうひとつの封建的権利(領主の裁判権)を大いに活用して、裁判で決着をつけてやろうと画策する。
一方、伯爵夫人はスザンナと一緒に、伯爵を懲らしめる罠を仕掛ける。
スザンナは伯爵の望みどおり逢引きを約束し、スザンナの衣装を着た伯爵夫人が逢引に現れるという段取りである。
今度の計画ではフィガロは蚊帳の外である。
裁判が始まり、金を払うか結婚するかどちらかだと判決が下るが、意外にもマルチェリーナの計略は破綻を来す。
というのも、フィガロは、幼い頃に誘拐されて行方知らずになった、マルチェリーナとバルトロの息子だと判明したからである。
これまで反目しあっていた老若二組の関係は、家族の愛情と思いやりに満ちたものへと一変する。
さて、伯爵夫人は逢引きの手紙をスザンナに書き取らせる。手紙をピンで封印し、返事の代わりにこのピンをスザンナに返してくれるようにしたためる。
そこへ農民の娘たちが花束を捧げに来るが、その中に女装したケルビーノが紛れている。
ケルビーノの扮装は、折悪しく現れたアントニオと伯爵に見破られてしまうが、バルバリーナが伯爵夫人の面前で、「お殿様は私にキッスするたびに欲しいものを何でもやろうと約束してくれました。だからケルビーノを私にください」とねだるので伯爵も仕方なしにケルビーノを許す。
いよいよフィガロとスザンナ、息子との再会で縒りを戻したバルトロとマルチェリーナの二組の結婚式が始まる。
式の途中、スザンナは伯爵にこっそり手紙を渡す。
華やかな婚礼の祝宴で幕となる。
第4幕 夜、城内の庭園
バルバリーナは伯爵からスザンナに返すようにといわれたピンを落としてしまい、捜している。
そこへやって来たフィガロとマルチェリーナに、彼女はピンの話を打ち明けてしまう。
伯爵夫人とスザンナの計画を知らないフィガロは、自分の花嫁が伯爵との逢引を承諾したことに愕然とし、女性の不実に対して復讐心を募らせる。
夜の庭園に、バルバリーナがケルビーノと逢引しようとやって来る。
フィガロはバルトロとバジリオを連れてやって来て、スザンナと伯爵の逢引について語り、自分が合図をしたら出てきて欲しいと頼む。
そこへ衣装を取り替えた伯爵夫人とスザンナが、マルチェリーナと共に現れる。マルチェリーナはこの場にフィガロが来ていることを二人に教える。
スザンナは自分を疑った報いに、聞こえよがしに愛のアリアを歌う。さて、逢引の現場にケルビーノが登場し、さながら愛の神クピドのように混乱を巻き起こす。
彼が伯爵夫人をスザンナだと思い込んでからかっている所へ、伯爵が現れる。
伯爵はケルビーノを追い払い、スザンナの衣装を着た妻を口説き始める。
嫉妬から二人を妨害しようとするフィガロを、伯爵夫人に扮したスザンナが呼び止めるが、声色を変えるのを忘れてフィガロにばれてしまう。
だがフィガロは気づかぬ振りをして、わざと彼女に言い寄るので、スザンナは頭にきて平手打ちを食わす。
すぐに疑いは晴れて二人は仲直りするが、今度は共謀して伯爵の前で先ほどの演技をしてみせる。
妻の不義を許せない伯爵は、フィガロを捕らえて大声で皆を呼ぶ。
しかし、一同の前で自分が愚行を晒してしまったことに気がつくと、伯爵夫人の前に跪いて許しを乞う。
伯爵夫人は、「私は貴方より素直ですから」と許しを与え、めでたしめでたしの結末を迎える。

(井上登喜子)