伊秩:僕は、今振り返ると、小学生時代にクラシックに出会い、ピアノや作曲の楽しさを知って、高校時代にロックに目覚めて…と、いい意味で段階を経て音楽に携わってきました。仕事として関わり出してからは、段階の数だけわくわくドキドキしてきました。先が見えない、何段にもなる未来への階段を少しずつ登っていくことの繰り返しです。おもしろいもので、僕らしさが受け入れられて曲がヒットしちゃうと、自分の感覚が狂う。何を出しても受けると、今度はつまらなくなるんです。そこで、もう一度初心に立ちかえる。本当にその繰り返しです。
これからは、上から下に情報が流れるのではなく、横に広がる多様性の時代です。この時代に、自分に何ができるのか。妥協せず、迎合せずに音楽を作っていくことは相当難しいですが、挑戦のしがいがあるし、ここにもわくわくやドキドキがあると感じています。
城之内:私の場合は幼い頃から自分の気持ちを音符に落とし込んでいるうちに作曲家としてのベースができ、そのうち、映像音楽に興味が湧いて、ミシェル・ルグランやモーリス・ジャールといった巨匠に強い衝撃を受けました。それがきっかけで東邦音楽大学附属中高、短大へと進学したんです。
短大在学中からドラマ音楽を依頼されてBGMを手がけたら、次は主題歌、ついにはドラマ出演と、どんどん世界が広がっていきました。DTMで作編曲したり、オーケストラ含めた生楽器での作編曲も多数手がけ、その後、欧米で自作アルバムが大ヒットしたことにより世界各国でのコンサートに関わらせていただく機会が増えて、作編曲をすることによって自ら指揮をしたり、主題歌を自ら歌ったり、今はユネスコ平和芸術家(注)としての任務とともに教鞭を取ったりしているので、何がきっかけで、人生がどう広がっていくか、不思議ですよね。
Miiya:自分の場合は、シンガーソングライターの他に、ライブハウス経営者としての関わり方があります。自分もそうでしたが、初めて舞台で人前に立つときは、右も左も分からないし、本当に緊張するものです。ライブハウスでは、初めて人前で歌った、演奏した、という人たちが、スキルアップしながら、やがてライブハウスを満員にしていく様を間近で応援することができます。人が育っていく過程を支える喜びがありますね。
先ほども話に出ましたが、技術があるのは当たり前の世界です。歌や演奏が上手い人はたくさん見てきましたが、それだけではファンはつかないんです。コミュニケーション能力や人間力、求心力の大切さも、ここにいるとよくわかります。
城之内:エンタメ界は複合芸術なので、どこか1点でも接点があれば、そこから世界を広げることができるんです。ですから、この専攻を考えている人たちには、定めた目標の精度を高めることの重要性とともに、PACSで選択肢の幅を広げて、二刀流といわず、三刀流、四刀流のマルチタスクで未来に立ち向かってほしいと思っています。
伊秩:レコード会社が資金調達をしてバックアップしてくれる時代ではなくなりましたからね。これからは、セルフプロデュース能力がより一層求められます。
伊秩:高校2年生くらいまでは、人生で一番多感な時期です。音楽でも何でも、心に火が灯るような、強烈な出会いを経験してほしいですね。その上でこの専攻を選びたいと思ったなら、覚悟してきてください。この業界には夢もあるけど、商業として商品を世に届ける以上、矛盾との共存を迫られます。高校までの間に、自分という人間に冷静に向き合い、将来へのリスクを背負う覚悟があるかまでしっかり考え、それから一歩を踏み出してください。
みなさんはSNSを通じてタイムレス、ボーダーレスに大量の情報に接することができるし、それを取捨選択し、考えを深める力があると信じています。覚悟が決まったら、ここでお会いしましょう。
Miiya:将来の道を模索している、という方も多いでしょう。学校生活やクラブ活動、YouTubeで興味関心のある分野を幅広く調べるなどして、視野を広げてみてください。そうすると、本当に興味のあることが見えてきます。得て不得手があるにせよ、まずは自信を持って「これが好き」といえるものを見つけましょう。加えて「どうしてもエンタメ界で生きていきたい」という強い情熱があるのであれば、ぜひ、入学してください。さらに自分の世界が広がる体験ができます。
城之内:Miiya先生のおっしゃる通り、やはりまずは自分が一番好きなことを自覚してください。その「好き」を、PACSの環境を活用してどう応用出来そうか、具体的にイメージしてみてください。PACSは、「好き」だけでは進めないその先を開拓するための場所です。4年間の授業を通して、自分でも気がつかなかった個性や、希望ある未来に出会うことができると卒業生たちが体現してくださっています。
作詞作曲家、シンガーソングライター、音楽プロデューサー/渡辺美里、森高千里等作家を経てシンガーソングライターとしてもデビュー。様々なアーティストに楽曲提供。現在、新たな発信基地原宿駅前ステージに出演するガールズユニット等の楽曲提供とプロデュースを展開。
青山学院大学文学部教育学科卒業。ライブハウス銀座Miiya Cafeオーナー兼マスターとして、多くのアーティストの応援をすると共に、アーティストMiiyaとしても、世界の“Happiness&Peace”へ貢献したいという想いから、UNICEFやUNHCRなどの国連機関へ寄付するチャリティイベントの開催など、積極的な音楽・教育活動も展開。