日本管弦打楽器ソロ・コンテスト

文部科学省後援
埼玉県芸術文化祭2020・埼玉まなびぃプロジェクト協賛事業

中学生・高校生のための第17回 日本管弦打楽器ソロ・コンテスト

全部門審査統括委員長および本選審査委員長メッセージ~本選審査を終えて~

2020年12月24日(木)から12月26日(土)の3日間にわたり日本管弦打楽器ソロ・コンテスト本選審査が行われました。審査結果につきまして、全部門審査統括委員長および各部の本選審査委員長のメッセージとともにご報告いたします。

全部門審査統括委員長メッセージ

ファゴット奏者
東邦音楽大学特任教授 演奏部長
浅野 高瑛

 毎⽇⾒えない敵との戦いを強いられながらも、果敢にこのコンテストに挑戦してくれた全国の中学⽣、⾼校⽣の皆さんに、まずはブラボーと拍⼿喝采をお送りしたいと思います。 弦楽器、打楽器から始まり、⽊管楽器、⾦管楽器と 3 ⽇間を通じ、ここ東邦⾳楽⼤学のグランツザールにて、本選審査が滞りなく無事に終了致しました。感染拡⼤防⽌のため、参加者ならびにご来場者の皆様には⼤変ご協⼒を賜りましたことを深く御礼申し上げます。

 各部⾨の終了後に⾏われる審査会議で、必ず出てくる⾔葉にテクニックの⾼さへの賛辞があります。中学⽣、⾼校⽣ともに年々技術的レベルが上がってきていることには驚きを隠せません。ただそうであるがゆえに、⾳⾊へのこだわりや、⾃らが発する⾳楽であるかどうかが強く問われています。今回の本選では、正確で⾼い技術とともに、こうした点がどれだけできているかということが成績を左右していたともいえるでしょう。

 「⾃ら発する⾳楽」という点についてもう少し⾔及するならば、皆さんには、教えられたものをなぞった演奏をすることにとどまってほしくはないのです。もちろん、これが⾼度な要求であることはわかっています。指導されたものを模倣すること⾃体が初めは難しいことです。ただ、こうしたコンテストで⾃ら切磋琢磨しようとしている皆さんには、そこで満⾜してしまうことなく、⾃ら殻を破り、⾃分の内からの表現を追求してほしいと切に願っています。皆さんの⾔葉で、皆さんの⾳で発することにより、聴く者に⼤きな感動を与えるのです。皆さんにはその可能性が⼗分にあると思います。

 最後になりますが、このコンテストの開催にあたってご協⼒いただきました多くの皆様に、⼼より御礼申し上げます。 第 18 回も参加者の皆さんとともにいい⼤会を作っていきたいと思っております。 どうぞよろしくお願い致します。 皆様、良いお年をお迎えください。

弦楽器の部 本選審査委員長メッセージ

NHK交響楽団首席チェロ奏者
東邦音楽大学特任教授
藤森 亮一

 本日はお疲れ様でした。 本選としては例年に比べ小規模ではありましたが、出場された皆さんはよく健闘されていたと思います。特に今年はチェロのレベルが高く、私もチェリストとしてうれしい思いでした。

 今年はコロナ禍においてどのように楽器や演奏と向き合っていけばよいのか、音楽に携わる誰もが模索した1年でした。練習環境やレッスン方法などへの様々な制限は現在も続いています。オンラインレッスンでのコミュニケーションの難しさもあるでしょう。すぐそばで先生の音や響きを感じながら学ぶに越したことはありません。狭い空間でずっと練習していると体や弓の使い方が小さくなってしまいがちですし、自分の音の聴き方、響かせ方も違ってきます。また、弦楽器はマスクをしたまま演奏可能、とはいうものの、鼻と口を覆っていることで音程や響きも感じにくくなります。

 今日の演奏においても、ホールの広い空間いっぱいに皆さんの音をもっと鳴らしてほしいと感じました。まだ難しい状況は続きますが、皆さんの楽器のいい響きや鳴らし方を追求し、工夫して練習していってほしいと願っています。

打楽器の部 本選審査委員長メッセージ

東京都交響楽団首席ティンパニ奏者
元東邦音楽大学特任准教授
安藤 芳広

 本選出場者の皆さん、大変お疲れ様でした。 審査員の先生方からいただいたご講評を合わせて、皆さんにお伝えしたいと思います。 まず、全体のレベルがとても上がっていることに驚かされました。難しい曲にも果敢に挑戦し、技術を高め、音楽を表現しようとする姿勢は素晴らしいと思います。そのような中で「自分の言葉で演奏しているかどうか」という点で差がついたのではないでしょうか。例えば、マリンバで四声帯を弾く時に各音のバランスを自ら作って弾きこんでいるか。スネアも同様ですが、自らフレーズを感じ取り、理解して演奏しているかなどです。

 今後の課題として、全体的に気になったのは身体の使い方です。楽器をよく鳴らすための重心移動や腕の使い方を研究したり、その音楽に合った動き方をしているか見直したりしてみてください。 楽器別では、スネアドラムは楽器のチューニング、特に響き線の締め方が気になりました。音の粒が見えにくい人が多かったので、ホールの響きに合わせた締め方を工夫しましょう。 マリンバは、フレージングに自ら発する音楽観を見せてほしいと強く感じました。そして鍵盤楽器だけでなく太鼓も学び、打楽器の基礎である腕や体の使い方、打点の捉え方などを勉強してほしいと思います。

 最後に、打楽器だけでなく様々な楽器やジャンルの音楽をたくさん聴いて、いろいろなビートや音楽を吸収してほしいと思います。勉強している過程の皆さんが今取り組むべき課題やトライする曲をよく吟味して、皆さんの音楽を育てるコンテストとしてこれからも挑戦してほしいと願っています。

木管楽器の部 本選審査委員長メッセージ

日本フィルハーモニー交響楽団オーボエ奏者
東邦音楽大学特任准教授
松岡 裕雅

 本日はお疲れ様でした。 コロナ禍で練習や演奏などの機会も制限されてきたと思います。この難しい状況下にもかかわらず、皆さんが健康的でのびのびとした演奏を披露してくれたことに、審査員一同とてもうれしく思っています。中学・高校ともに演奏レベルは全体としてよかったと思いますし、今後に期待できると感じる人も多く見受けられました。木管楽器といっても各楽器の個性は実に様々で、そういった点でも苦慮しながら採点していました。

 どの楽器においても言えることなのですが、私たちは皆さんの積極的な演奏を聴きたいといつも思っています。本番の緊張もあるでしょうが、少しくらいミスがあっても積極性を見せてほしいと感じました。とはいえ、勢いに任せて雑になってしまうのも良いとは言えません。演奏とは、さまざまな要素のバランスが大事なのです。

 日本における木管楽器の中高生の技術レベルはどんどん上がっていると感じます。だからこそ、皆さんには自分の楽器に対する信念や愛をもって、「自分の楽器の美しさとは何だろう?」と突き詰めて、その成果としてこういったソロの曲に向かってもらいたいと切に願っています。

金管楽器の部 本選審査委員長メッセージ

東京アーバンブラスアンサンブル主宰
東邦音楽大学大学院講師
藤井 完

 毎年出場者のレベルが上がってきていますが、今年の金管楽器の出場者も期待にたがわず高いレベルでの演奏を聴かせてくださいました。新型コロナの感染が拡大する中で、学校施設が使えず、自宅での音出しも制限されていたことでしょう。特に金管楽器は練習するのが大変だったことと思われますが、皆さん方の頑張りに拍手をお送りします。

 演奏内容につきまして申し上げるならば、息の使い方についてであります。近年は少なくなってはきましたが、まだ若干の人たちの中に「歌う息」と「怒鳴る息」の区別がつかない例が見られます。金管楽器は声こそ出してはいませんが「歌うように」吹きます。このことがわかってくるとさらに楽しく演奏できると思います。

 また、テクニック、音質・音色、表現力、どれが欠けてもすばらしい演奏にはなりません。これらの要素をバランスよく育ててほしいと思いますし、今日の自分の演奏はどうだったか、自分には何が足りないのかをもう一度見直して、向上してほしいと願っています。特に高校生には、技術的に育ってきているからこそ、もっと表現面に注目してほしいと思います。いい音楽とは、いい表現とは、ということに普段から意識を向けてみてください。

 来年度のコンテストにおいても、レベルの高い演奏を期待しております。

本選審査結果のご報告

全部門審査統括委員長ごあいさつ~全部門予選を終えて~

ファゴット奏者
東邦音楽大学特任教授
演奏部長

Kouei Asano
浅野 高瑛

10月25日の鹿児島予選および川越での弦楽器・打楽器の部予選を皮切りに、11月3日の木管楽器の部、15日の金管楽器の部と、コロナ対策を充分にとりながら予選を無事に終えることができました。地方予選開催にご尽力いただいた現地関係者の皆様に心より感謝致します。 しかし、この新型ウイルスの感染拡大により10月31日に予定していた青森予選は中止せざるを得なかったことをこの場をお借りしてお詫び申し上げます。自然の脅威とはいえ、コンテストに向けて頑張って練習してきた若者たちのひたむきさを思うと、言葉がありません。 全部門の予選を終えて改めて思いを馳せますと、たくさんの感動がよみがえってまいります。 まず、決して充分ではない練習環境の中、皆さんがwith Coronaとして独自の練習をされてきたのだということが明確に伝わってきました。 審査員からは過去最高に素晴らしい評価が下された場面も多々見られました。 また、コロナ禍にも関わらず昨年とほぼ変わらない数の生徒さんが挑戦してくれたことには、ただただ主催者として驚かされるばかりでした。 やはり音楽とはどのような状況下でも私たちを勇気づけ、強く背中を押してくれるものなのだと実感させられました。 今回は、全部門予選参加者350名のうち、122名が本選に進むことになります。 本選出場者には、自分の音楽に対する熱い想いをぶつけてほしいと思います。 また、望んだ結果が得られなかった人もどうか音楽の力を信じ、明日に向かって胸を張り頑張っていただきたいと思います。 全国的に感染者増が取り沙汰されていますが、私たちは本選に向けて感染防止対策を更に強固なものとし、安心して本選にご参加いただけるよう努めてまいります。 本選で皆様に会えることを、そして素晴らしい演奏を聴かせていただけることを今から心待ちにしています。 頑張ってください。

予選審査結果のご報告