Vol.08 石 倚潔

石 倚潔

上海から日本へ。東邦での大学生活が人生の宝物に

 上海の郊外で生まれ育ち、小学校の先生に声の良さを見いだされて歌を習い始めました。小学校の6年間はコーラスに加わり、変声期を迎えて2年間休んだものの、その後も歌い続け、高校生の頃には将来歌手になるために大学に進んで本格的に歌を学びたいと思うようになりました。 そんなある日、地元の上海で東邦音楽大学の学校説明会が開かれることを知ったのです。試しに行ってみると、充実した教育内容はもちろん、先生方がとても親切に接してくださり、ぜひともこの大学で学びたいという思いが湧いて、日本に行くことを決意しました。
 大学生活では人生の宝物となる貴重な経験ができました。特に周囲の先生方や同級生のふるまいを見て、日本人の礼儀正しさを身につけることができたことは大きな収穫でした。これが今の仕事に大いに役立っています。

院生時代、オーストリア留学でテノール歌手の夢を実現

石 倚潔

 2006年に東邦の大学院に進んだ私は、特別研修生として奨学金をいただき、院生のままオーストリアのグラーツに留学しました。
 そして1年後、オーストリアで開催されたF.タリアヴィーニ国際声楽コンクールで優勝したのをきっかけに、イタリアでオペラのオーディションを受けました。そして、モーツァルト作『コジ・ファン・トゥッテ』のフェルランド役でプロデビューを果たしました。
 あれから6年、現在はオーストリアのグラーツを拠点に、イタリア、フランス、ベルギー、イギリス、アメリカ、チリなど世界各地の舞台に立っています。今年10月にはイタリア・ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場で上演される『愛の妙薬』で主役のネモリーノを務めます。

母校への熱い想いを胸に歌った「創立75周年記念特別演奏会」

石 倚潔

 去る2013年6月24・25日に開催された創立75周年を記念して開催された特別演奏会に出演させていただき、異なる作曲家のアリア4曲を独唱しました。
 ロッシーニ作『チェネレントラ』は、ベルカント・テノールとして評価を受けている私が、いま最も得意としているオペラです。また、グノー、チレーア、プッチーニの3曲は大学時代から歌っていた大好きな曲目。特にプッチーニ作『ラ・ボエーム』の“なんて冷たい手”は、大学3年次にグランツザールの舞台に立ち、初めて人前で歌った思い出の曲です。歌っているうちに当時のシーンが脳裏に蘇り、懐かしさに胸が熱くなりました。
 久しぶりに母校の先生方や先輩、同級生、後輩の前で私の歌を披露することができ、うれしさでいっぱいでした。末廣先生の指揮と東邦の管弦楽団の演奏は素晴らしく、おかげでとても気持ちよく歌うことができました。客席から「ブラボー!」の声もいただき、光栄に思います。おかげで、感激ひとしおの晴れ舞台となりました。
 後輩のみなさん、東邦は一人ひとりの夢を応援してくれる大学です。頑張れば夢は必ず叶います。東邦人として一緒に頑張りましょう。

プロフィール

石 倚潔

1982年上海生まれ。2006年東邦音楽大学を首席で卒業。同大学院特別研修生に選ばれオーストリアに留学。数々の国際声楽コンクールで優勝。山崎明美、ぺーター・シュメルツァー、リチャード・バーカーに師事。2009年ロッシーニ・オペラ・フェスティバル本公演『オリー伯爵』のタイトルロールに大抜擢され、国際的な活躍を始める。今後はフェリーチェ歌劇場『愛の妙薬』、ロッシーニ・オペラ・フェスティバル『デメトリオとポリビオ』等に出演予定。

[コンクール受賞歴]
・第13回“フェルッチョ・タリアヴィーニ”国際声楽コンクール(優勝・ベストテノール賞・観客賞)
・第37回“トティ・ダル・モンテ”国際声楽コンクール(優勝)
・第24回“マリア・カニーリァ”国際声楽コンクール(優勝)
・パッサウ市国際声楽コンクール2007(優勝・リート賞)