東邦音楽短期大学

　10月の沖縄での演奏会に向けた準備や練習は、まず学生6人という人数で何ができるだろうかという話し合いから始まった。先輩方の演奏会を参考にしようとしても、この人数では同じようにいかない。だからといって、ただ演奏を披露しただけでは、きっと子供達は飽きてしまう…。選曲以外にも、演出や司会進行など問題は山積みだった。

そんな中決まったテーマは「みんなで楽しむ演奏会」。メインとなる第1部のジブリは、それぞれが映画に登場するキャラクターに扮し、歌や演奏を披露する。第2部はリズム遊びにイントロクイズとダンス。演奏を聴いてもらうだけにはせず、一緒に歌って踊って音楽を体感する。そんな演奏会を目指した。

演奏中飽きさせない工夫も話し合った。ジブリでは合唱や演奏とダンスのコラボ、リコーダーアンサンブルなど様々な音色を取り入れ、キャラクターを次々と登場させた。どうしても手の足りない部分は先生方にも参加していただき、台本は何度も修正を重ねた。衣装や小道具も手作り。本番2週間前に新しく曲を追加するなど、直前まで試行錯誤を繰り返した。 また、イントロクイズは事前に小学生に好きな曲のアンケートを実施し、それを参考に選曲した。逆再生を仕込み難易度を少しずつ上げるなど、どの学年の子供達も楽しめる工夫をした。またアンケートで最も人気だった曲に簡単な振り付けを考えレクチャーし、一緒に踊れるようにした。

そうして迎えた本番当日。大きく広い体育館に集まった子供達を前に、それぞれ役になりきっての演奏会が始まった。ノリノリで歌ったり、キャラクターの問いかけに元気に答えてくれる子供達。本番前の緊張感はいつの間にか、もっと楽しんでほしいという思いに変わり、イントロクイズもダンスも、それぞれが全力で役割を果たした。大盛況のうちに幕を閉じた演奏会は、音楽がもたらしてくれる大きな喜びを私達に再認識させてくれた。

また今回の演奏旅行で、もうひとつ印象深かったイベントがある。宿泊先のホテルのロビーで、演奏のリハーサルやお浚いを兼ねたゲリラライブを行ったのだ。偶然ロビーにピアノがあるのを見つけ、ふとした思いつきで始まったこのゲリラライブ。夕食を終え解散したにも関わらず、それぞれの楽器や楽譜を持ち寄り演奏したメンバーたち。ロビーを通りかかった宿泊客の方や、修学旅行中の学生の方などが立ち止まり、手拍子やダンスの振りを真似てくださるなど、音楽の楽しさと笑顔を共有できた。旅行の楽しい思い出の一部となれたようで嬉しかった。

この沖縄での演奏旅行で大きな達成感を得られたのは、メンバー同士が互いを尊重しながら、妥協のない話し合いと練習を重ねられたからだろう。個性的なメンバーがそれぞれの見解から意見を出し合ったことで、得意分野を活かした面白い内容のプログラムにできたのではないだろうか。全員で同じ目標に向かって熱意を持って取り組んだこの演奏会は、苦労も喜びも、強い絆で結ばれた最強の仲間たちと、美しい沖縄の風景や沢山の弾けるような笑顔とともに、色鮮やかな思い出として心に残り続けるだろう。

学生のレポート