大学内での音楽療法セッションについて

東邦音楽大学では、大学構内にあるセッションルームを使い、地域のお子さまに向けた音楽療法を実施しています。
(2020年5月現在、新型コロナウィルス感染防止のため音楽療法は休止しています)

大学内での音楽療法は、もちろん対象となる人(“クライアント”といいます)のために実施されるものですが、東邦音楽大学では、この音楽療法に学生も参加し、“臨床実習”としての役割も持っています。

音楽療法専攻の学生は、音楽療法士の資格を取得するため3・4年次に臨床実習を経験する必要があります。
地域の病院やデイサービス・学校の特別支援学級・作業所などで学生が音楽療法を実践し、技能の習得や上達を目指します。この実習先の中に、大学内セッションも含まれているのです。

大学内セッションでは、学生の理解度合い・得意/不得意・どんなことが出来るようになると良いか、などを考慮し、学生に課題を出していきます。

どんな課題を出すのか判断が難しいところですが、
「クライアントにはどんな経験が必要だと思う?」
「そのためには、どんな活動がいいかな?」
「今回これができたから、次はこれも挑戦してみない?」
などと話し合いながら、課題を決めていきます。

楽器を鳴らすための曲を作ったり、既成曲をアレンジしてダンスを考えたり、即興演奏でクライアントとやりとりをしたり、学生はさまざまな課題に取り組みながら研鑽を積んでいきます。

例えば…
箏を弾ける学生は、平調子(ひらぢょうし:箏の調弦法)の音階を使った和風な曲を作りました。
ゆったりとした部分と歯切れのいい部分とのメリハリを出すため、フレーズの長さを変えたり、伴奏の弾き方を工夫したりして、クライアントの音楽体験がより豊かになるように試行錯誤を重ねました。

クライアントの模倣(もほう:真似をすること)を引き出すため、太鼓の叩き方を模倣する曲を作った学生もいます。
クライアントに馴染みやすいように「♪たいこ、たいこ」と繰り返しのフレーズを取り入れたり、最後は一体感を持てるように全員で太鼓を叩く場面を作ったり、仕掛けに満ちた曲になりました。

また、大学内セッションは保護者の方も同席して、お子さまの様子をご覧になっています。
保護者とお話をする機会もあるので、保護者との接し方・対応の仕方についても貴重な学びがあるようです。

大学内の音楽療法セッションが、クライアントの心身の健康に寄与するとともに、学生の有意義な学びに繋がることを願っています。

音楽療法専攻 研究員
飯島 千佳