ウィーンより
音楽療法専攻の教員の二俣です。
私は、いま、東邦音楽大学3年次生のウィーン研修の引率として、ウィーンに来ています。
今回私が引率しているのは、音楽療法専攻以外の学生さん(ピアノ、管楽器、作曲)19名です。
2週間の研修ですが、ちょうど半分あたりです。
充実した授業、レッスンに、学生さんたちは一生懸命に取り組んでいます。
今年度の音楽療法専攻のウィーン研修は、9月に予定されています。
音楽療法専攻のウィーン研修では、他の専攻のようにレッスンではなく、
現地の音楽療法士・音楽療法研究者の先生方による、ワークショップと授業が中心です。
即興を使った音楽療法体験、身体に気づくワーク、日本ではほとんど紹介されていない交通事故に遭って直後の人や昏睡患者の事例紹介など、大変充実したプログラムになっています。
さて、今日は、夕方から、ウィーン・フィルの演奏会です。楽しみです。
2013 高校生のための音楽療法入門講座
「高校生のための音楽療法入門
―音楽を医療・福祉の分野にいかそう」
を開催します。
昨年も開催いたしましたが、大変好評の講座です。
現場で働く音楽療法士でもある本学教員の講師が、現場の治療場面のビデオも交えて、
わかりやすくお伝えします。
どうぞふるってご参加くださいませ。
1月26日(土)15時~
2月16日(土)15時~
3月24日(日)14時~
東邦音楽大 文京キャンパス
<お申し込み不要・受講料無料>
内容:
・ミニ講義:音楽療法とは何か
・音楽療法体験ワークショップ
・職業としての音楽療法…
・卒業後の進路
・音楽療法専攻入試準備のコツ
予定講師:
二俣泉(東邦音楽大学准教授・音楽療法専攻チームリーダー・日本音楽療法学会常任理事・認定音楽療法士)
馬場存(東邦音楽大学准教授・医学博士・精神科専門医・精神保健指定医・認定音楽療法士)
平田紀子(東邦音楽大学専任講師・認定音楽療法士)ほか
お問合せ:
事務本部 広報入試センター TEL.03-3946-9667
東邦音楽大学エクステンションセンター講座
東邦音楽大学エクステンションセンターでは、複数の音楽療法関連講座を開講しています。
いずれも、すばらしい講師による充実した講座です。
11月9日(金)の18時~20時 「楽器を用いた音楽療法」があります。
筑波大学附属大塚特別支援学校教諭、音楽療法士の根岸由香先生の講座です。
根岸先生は、障がい児領域の音楽療法にたいへん豊かな臨床経験をおもちで、ユーモアとアイデアがあふれる講座は、いつも大変好評です。→講座内容の詳細・お申し込みはこちら
11月10日(土)の16時~18時 「自分の生き方を見つけるためのグループ・セラピー」があります。
講師は、米国で音楽療法を学ばれた吉原奈美先生です。
聴取型の音楽療法の代表的な方法論、GIM(音楽をもちいたイメージ誘導法)による体験型の講座です。
吉原先生は、以前、東邦音大の音楽療法専攻の学生を対象にしたワークショップをしていただいたことがありますが、学生たちに大変すばらしい体験を提供していただきました。
→講座内容の詳細・お申し込みはこちら
音楽療法の講習会
2012年11月24日・25日に、日本の音楽療法士の団体「東京音楽療法協会」主催の第23回講習会が開催されます(場所は、日本大学芸術学部江古田校舎)。
東邦音楽大学音楽療法専攻の教員・スタッフのうち何名かも、この団体の運営や講習会の企画にかかわっています。
この記事の執筆者である二俣が、1日目の最初に、「場・対象者に応じて、『自分』と『音楽』をいかに活用するか」と題する全体講演を担当させていただきます。
その他に、様々なワークショップもあり、大変充実した講習会です。
詳しくは、下記のホームページをご参照ください。
卒業生の仕事場:石森由祐さん
今回は、音楽療法専攻を卒業して3年目になる、石森由祐さんにお話を伺いました。
――大学を卒業後、どのような進路に進まれたのですか?
卒業後すぐは東京都の調布市や昭島市で、障害児・者の音楽療法に携わっていました。その後地元の仙台に戻っていたのですが、昨年の3月に東日本大震災があり、地元も大きな被害を受けました。震災後は、移動式入浴サービスなどの生活支援の一員として、避難所で2ヶ月ほど仕事をしていました。
震災から約1年経った今年の春から、埼玉県で現在の仕事を始めました。現在は、高齢者のためのリハビリテーションを中心とした小規模デイサービスで生活支援員として働いています。
――現在のお仕事は、どのようなことをしているのですか?
送迎や清掃など施設職員としての業務をしながら、リハビリテーションの一環として1日2回音楽療法セッションを担当しています。入職当初は音楽療法は行なっていませんでしたが、大学で音楽療法を学んでいたことがきっかけで取り入れてもらえるようになりました。他の職員の方と意見交換をしたり、利用者さんからリクエストをいただいたりして、日々のセッションに生かしています。現在の職場での音楽療法に関しては、自分に一任していただいています。
――仕事をしていてやりがいを感じること・嬉しく感じることはどんなことですか?
音楽療法を取り入れる前から施設を利用している方に「今は音楽療法が1番楽しみ」と言っていただけたり、体験入所をされた方から「音楽療法があると聞いたからここに来た」と聞いたりしたときです。
ある認知症の男性は、はじめは反応があまり見られなかったのですが、今では一緒に歌ってくださるようになったり、音楽療法の時間に歌った曲を「家に帰ったら奥さんに歌う」と意気込んで帰っていったりしています。このような利用者さんのよい変化が実感できると嬉しいです。利用者さん同士の雰囲気も良くなったように感じます。
――大学で学んだことで役に立っていることはありますか?
人間関係のスキルを学んだことが大きいと思います。3年生になると臨床実習が始まりますが、(対象者を相手にした)実習の場だけでなく、(実習のチームメートや先生などを相手にした)学生生活全般で人との関わりを学ぶ機会が多かったように感じます。そのおかげで、音楽療法の技能面だけでなく人として成長できたと思います。
また、現在の仕事をするまで高齢者の音楽療法の仕事の経験はほとんどありませんでしたが、高齢者施設で実習をした経験を参考にセッションを組み立てることができました。
――今後やっていきたいことはありますか?
現在の職場での音楽療法はまだ始まったばかりで探り探りの部分が多いですが、これから発展させていきたいと思っています。リハビリテーション中心の施設ですから利用者さんも比較的機能の高い人が多いので、音楽療法での成果を発表する機会を作りたいと考えています。また現在の音楽療法セッションは歌唱活動中心ですが、楽器活動などを通してより効果的なリハビリテーションに繋げていけたらと思っています。
高齢者領域の音楽療法も興味深くておもしろいですが、以前携わっていた障害児・者の領域にも関わっていきたいです。
(インタビュー・構成:飯島千佳)
卒業生の仕事場:宮間敦子さん

今回は、特別支援学校の教員として勤めて1年目(取材当時)になる、宮間敦子さんにお話を伺いました。
――普段のお仕事の様子は?
特別支援学校小学部低学年の教員として、2人クラスの担任をしています。学習場面だけでなく身支度・食事・移動など、子どもの学校での日常生活場面全般に関わっています。指導に音や音楽を用いて関わることもしていますが、担任の先生としての職務がメインです。
――音や音楽を用いた関わりとは、どのようなものですか?
音楽が好きな子が多く、メロディの抑揚を楽しんだり歌を好んで聴いたりする子がいます。そこで、子どもが何かをできた時にごほうびとしてその子の好きな歌を歌ったり、「この歌を歌って!」と先生に伝えるための手段として発声を促したりしています。発声の練習として「♪大きくア」という曲にのせて声を出す場面を作っていて、これには長い期間取り組んでいます。
――お仕事をする上での喜び・やりがいはどんな所ですか?
子どもの成長やステップアップを実感した時です。年度初めよりも待つことができるようになったり、自分のやりたいこと・伝えたいことを表せるようになったり、予定外のことにも対応する力がついたりと、成長を感じる場面が日々あります。それに、何かをできた時に「先生、褒めて!」というようなしぐさをするなど、私に対して期待をもって関わってくれるようになったことも嬉しいことです。そのような日々の成長に立ち会えるのも、担任として子どもの学校生活全般に関わってきたからこそなので、その点も良かったと思っています。
――大学での経験が生かされたことはありますか?
3・4年生の音楽療法実習では、技術やレパートリーの面で学んだこともたくさんありましたが、実習生同士のコミュニケーションの大切さやとっさの対応など、音楽療法の技術以外でも多くのことを学べました。仕事をするようになって、実習で学んだことを改めて実感させられることがあります。そのような時に、音楽療法実習での経験は大事な経験だったなと感じます。
――今後の目標はありますか?
音楽療法的な関わりの場面をこれから作っていけたらいいなと思います。現在は小学部低学年に勤めていますが、違う学年を持つことになれば必要な指導も変わりますし、子どもたちの将来の自立を見据えて、音楽での関わりや音楽で伝えられることを考えていきたいと思っています。
(インタビュー・構成 : 飯島千佳)

