卒業生の仕事場:宮間敦子さん


今回は、特別支援学校の教員として勤めて1年目(取材当時)になる、宮間敦子さんにお話を伺いました。

 

――普段のお仕事の様子は?

特別支援学校小学部低学年の教員として、2人クラスの担任をしています。学習場面だけでなく身支度・食事・移動など、子どもの学校での日常生活場面全般に関わっています。指導に音や音楽を用いて関わることもしていますが、担任の先生としての職務がメインです。

 

――音や音楽を用いた関わりとは、どのようなものですか?

音楽が好きな子が多く、メロディの抑揚を楽しんだり歌を好んで聴いたりする子がいます。そこで、子どもが何かをできた時にごほうびとしてその子の好きな歌を歌ったり、「この歌を歌って!」と先生に伝えるための手段として発声を促したりしています。発声の練習として「♪大きくア」という曲にのせて声を出す場面を作っていて、これには長い期間取り組んでいます。

 

――お仕事をする上での喜び・やりがいはどんな所ですか?

 子どもの成長やステップアップを実感した時です。年度初めよりも待つことができるようになったり、自分のやりたいこと・伝えたいことを表せるようになったり、予定外のことにも対応する力がついたりと、成長を感じる場面が日々あります。それに、何かをできた時に「先生、褒めて!」というようなしぐさをするなど、私に対して期待をもって関わってくれるようになったことも嬉しいことです。そのような日々の成長に立ち会えるのも、担任として子どもの学校生活全般に関わってきたからこそなので、その点も良かったと思っています。

 

――大学での経験が生かされたことはありますか?

 34年生の音楽療法実習では、技術やレパートリーの面で学んだこともたくさんありましたが、実習生同士のコミュニケーションの大切さやとっさの対応など、音楽療法の技術以外でも多くのことを学べました。仕事をするようになって、実習で学んだことを改めて実感させられることがあります。そのような時に、音楽療法実習での経験は大事な経験だったなと感じます。

 

――今後の目標はありますか?

 音楽療法的な関わりの場面をこれから作っていけたらいいなと思います。現在は小学部低学年に勤めていますが、違う学年を持つことになれば必要な指導も変わりますし、子どもたちの将来の自立を見据えて、音楽での関わりや音楽で伝えられることを考えていきたいと思っています。

(インタビュー・構成 : 飯島千佳)

「高校生のための音楽療法入門講座」が開催されます

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東邦音楽大学文京キャンパスにて、「高校生のための音楽療法入門―音楽を医療・福祉の分野にいかそう」が開催されます。病院、福祉施設、教育現場で、音楽療法が行なわれることが増えてきました。諸外国では、「音楽療法士」という職業は、すでに専門職として確立しています。日本でも、ここ10年ほどで、急速に普及してきました。音楽療法士という資格制度もあり、多くの音楽療法士が活躍していますが、具体的にどんなものかは、意外と知られていませんこの講座では、音楽療法とは何か、音楽療法士になるためにはどんな方法があるのかについて、わかりやすく説明します。また、この講座は、ピアノ・レスナーの先生方、高校の先生方、あるいは中学生・高校生の保護者の方々が、生徒さん・子どもさんの進路の相談を受ける際の参考になるとも思います。

内容:ミニ講義:音楽療法とは何か、音楽療法体験ワークショップ、職業としての音楽療法…卒業後の進路音楽療法専攻入試準備のコツ

予定講師:二俣泉(東邦音楽大学准教授・音楽療法専攻チームリーダー・日本音楽療法学会常任理事・認定音楽療法士)馬場存(東邦音楽大学准教授・医学博士・精神科専門医・精神保健指定医・認定音楽療法士)平田紀子(東邦音楽大学専任講師・認定音楽療法士)ほか

場所:東邦音楽大学 文京キャンパス

日時:

617日(日)13:0014:30
7月   7日(土)15:0016:30
721日(土)13:0014:30

お問合せ:文京キャンパス 事務本部 広報担当 TEL.03-3946-9667

2012年度授業がはじまりました

2012年度の授業がはじまりました。
今日(2012年4月26日)は、2年生向けの「音楽療法理論と技法」の第2回の講義がありました。
この授業は、音楽療法とは何か、音楽療法のさまざまなアプローチについて解説していく授業です。また、音楽療法の実践場面を収録したビデオもたくさん見て、音楽療法の方法を具体的に感じながら学んでいきます。
今日は、音楽が人間にもたらす影響(コミュニケーション、リラックス、活性化、コミュニケーションなど)についての話が中心の講義でした。講義の中では、こんな話をしました。

医師が薬を患者に投与する場合は、「症状」に合わせて薬を選びます。音楽療法は、薬のように音楽を使うわけではありません。
頭痛にはモーツァルト、腹痛にはベートーヴェン、というように、症状に合わせて曲があるわけではありません。同じモーツァルトの曲を聴いても、リラックスする人もいれば、退屈だと思う人もいます。ですから、音楽療法の場合、症状に合わせて音楽を選ぶのではなく、対象となる人個人にあわせて(好みやそれまでの音楽歴など)音楽を選ぶことになります。ここが、音楽療法の難しいところでもあり、また、仕事として面白く、やりがいのあるところでもあります。

さて、4月29日、30日と、東邦音楽大学文京キャンパスにおいて、東邦祭が開催されます。音楽療法専攻でもさまざまな催しを企画しています。皆様、どうぞふるってご参加ください。

智田邦徳先生来訪

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2011年11月14日、岩手県から智田邦徳先生(岩手清和病院音楽療法士、日本音楽療法学会東北支部長、日本音楽療法学会災害対策特別委員会委員長)が川越校舎に来訪されました。

東邦音楽大学エクステンションセンターで講義をしていただき、そのまま東京に数日滞在されて、この日、川越校舎に遊びに来てくれたのです。

智田先生と、この日に勤務していた3名の教員、平田紀子先生、高畑敦子先生、そして二俣(この記事の執筆者)とは、同世代の音楽療法士として共に成長してきた20年来の音楽療法仲間であります。

智田先生は、東日本大震災が発生して、程なく被災者のための音楽療法活動を開始されました(その報告が、日本音楽療法学会のHPにあります)。
http://www.jmta.jp/disaster/disa201104_02.pdf

智田先生は、ユーモアのセンス、見事な音楽技術、そして卓越した人間関係の術をもった、素晴らしい音楽療法士です。今日、智田先生と交流させていただいた学生たちには、きっと大きな影響があったのではないでしょうか。

写真は、音楽療法の研究室で、お昼を食べているスナップです。

東京音楽療法協会第22回講習会

音楽療法の実践者の集団である「東京音楽療法協会」の第22回講習会が、11月12日、13日に開催されます。

東京音楽療法協会は、20年以上の歴史のある団体です。東邦音楽大学音楽療法専攻の教員、複数の卒業生が運営にかかわっています。
(詳細はHPをご覧くださいhttp://www.k3.dion.ne.jp/~tamt/workshop.html

講習会の1日目には、「”あたり前”であること~被災者支援のあり方を考える~」と題する儀賀理暁先生(埼玉医科大学総合医療センター)の講演があります。

儀賀先生は、毎年、東邦音楽大学音楽療法専攻で、緩和ケアに関する特別講義をしていただいています(受講した学生が皆、とても心動かされる講義です)。

他にも、多くの講義やワークショップがあり、大変充実した講習会です。

東邦音楽大学エクステンションセンター音楽療法関係講座――GIMの体験ができる!

東邦音楽大学エクステンションセンターの公開講座で、音楽療法関連の素晴らしい講座が予定されているので、お知らせします。

「働く女性のためのグループ・セラピー」(講師:吉原奈美先生)

自分の悩みや、「自分の人生をどう生きていきたいか」などの問いを話し合い、その後、音楽とイメージを使って自分の内側に答えを求めていく講座です。

この講座で用いられる技法は、音楽イメージ療法(GIM)です。これは、アメリカで研究された心理療法で、リラックスした状態で、プログラムされた音楽を聴きながら自然に浮かぶイメージによって心の中を探っていきます。

担当される講師は、アメリカでこのGIMを学ばれた吉原奈美先生です。吉原先生には、以前、東邦音楽大学の学生にもワークショップをしていただいたことがありましたが、とても素晴らしい時間でした。

貴重な機会です。ご興味のある方は、ぜひぜひご参加くださいませ。

詳しくはHPをご覧ください。
東邦音楽大学エクステンションセンター 働く女性のためのグループ・セラピー

11月の定例研究会のお知らせ

東邦音楽大学音楽療法専攻の定例研究会が、11月17日(木)の17時45分から、行なわれます。

今回の研究会の内容は、心理学の講義をご担当されている非常勤講師の徳富政樹先生による調査研究に関するレクチャーと、平田紀子先生による、東日本大震災被災者への音楽療法の報告です。

東邦音楽大学川越校舎、16号館で行います(部屋は、当日、16号館1階の音楽療法研究室前の掲示板でお知らせします)。

誰でも参加可能のたいへんオープンな研究会であるところが、この研究会の魅力だと思います。発表者と参加者が、とても気楽に議論できる、臨床活動・研究活動の「面白さ」が味わえる素敵な時間です。

皆様、どうぞふるってご参加ください!

日本音楽医療研究会

東邦音楽大学川越校舎グランツザールで、2011年11月27日(日)、10時~16時30分に、第5回日本音楽医療研究会学術集会が開催されます。
大会長を、東邦音楽大学准教授の馬場存先生がつとめられます。
プログラムは、研究発表、シンポジウム(医療と音楽―互いに求めるもの)、ジャズ歌手の鈴木重子さんの講演など、多彩で充実した内容が予定されています。
馬場先生にくわえ、研究員の佐々木先生、飯島先生、准教授で本稿の執筆者の二俣など、東邦音楽大学音楽療法専攻のスタッフが、運営にかかわっています。
どうぞふるってご参加くださいませ。

音楽療法専攻担当教員の研究・演奏活動

東邦音楽大学音楽療法専攻の担当教員は、大学での教育、現場での音楽療法実践に加えて、アクティブに活動を行っております。
近々の予定を含め、その一旦をご紹介したいと思います。

1)馬場存先生(東邦音楽大学准教授)
・CDシングル「pray」のリリース(2011年11月27日):
馬場先生は、精神科医、音楽療法士としての仕事に加え、ピアニスト・作曲家としても活躍しておられますが、シングルCD「pray」をリリースされました。
東日本大震災への復興への思いのこめられた美しい作品です。
http://bookridgerecords.com/akirababa/pray2

・第5回日本音楽医療研究会学術集会(2011年11月27日):
すでにこのブログでもお知らせしましたが、馬場先生が大会長をつとめられます。会場は東邦音大川越校舎、グランツザールです。
また、大会の最後には、宮野陽子先生(東邦音楽大学准教授)のヴァイオリン、馬場先生のピアノによる馬場先生オリジナル曲の演奏も予定されています。
http://jmmusic.umin.jp/

2)平田紀子先生(東邦音楽大学専任講師):
・日本音楽療法学会関東支部地方会・講習会での講義「「寄り道回り道、今の道」(2012年3月10日):
講義やワークショップの名手としても知られている平田先生が、上記の講義を担当されることが予定されています。
臨床での失敗や学び、そこからつかんだ独自の方向性、周囲の人々とのつながりなどを語ります。音楽療法士なら誰でも悩み、乗り越えていかなければならない専門職へのプロセスが、深い共感と示唆を与えてくれると思います。

3)二俣泉(東邦音楽大学准教授):
・書籍「音楽で育てよう子どものコミュニケーションスキル」、春秋社から出版予定(2011年12月):
この記事を執筆している二俣の近々の予定としては、年内に上記の本を出版する予定です。
日本大学芸術学部の鈴木涼子先生との共同執筆、獨協医科大学越谷病院・子どものこころ診療センター長・教授の作田亮一先生の監修です。
発達障害の子どものコミュニケーションを育てるための様々な音楽活動の例が掲載されている、”現場で使える”本になるようにがんばって作りました。現在、校正作業が進行中で、年内には出版できると思います。

卒業生の仕事場:正司侑子さんにきく

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東邦音楽大学音楽療法の卒業生たちが、多くの現場で活躍をしています。
 今回は、常勤職として音楽療法の実践に取り組んで4年目になる、卒業生の正司侑子さんに、現在のお仕事についてうかがいました。また、正司さんは、音楽療法専攻卒業生の仲間と、ボーカル2名とピアノのユニット「花うたぴあの」を結成し、ライブ活動も行っています。

Q: 現在の職場での仕事での様子を教えてください。

A: 障害者支援施設で、常勤の音楽支援員(私の職場独自の職名で、音楽療法を専門に行なう職種)として入職しました。今年で4年目になります。知的障害者・身体障害者(いずれも成人)を対象とした支援施設で、そこに住んでいる利用者と、通ってくる利用者とがいます。私の主たる仕事は、そうした利用者と音楽で関わることです。
 私の勤める施設は、音楽療法に大変力を入れていて、音楽療法専用の部屋やたくさんの楽器もあり、音楽療法士にとって、大変恵まれた職場です。
 私はほぼ毎日、午前中に小グループでの音楽療法、午後に音楽ムーブメント(音楽に合わせて体を動かす活動)を行なっています。その他、必要に応じて利用者の生活面での介護の仕事も行いますが、1日のうちの大半の仕事は利用者に音楽でかかわる時間です。

Q: 仕事の上で、一番のやりがい、よろこびは何ですか?

A;掃除や着替えなど、生活面でのケア、音楽療法の部屋への誘導なども私の仕事の一部です――つまり、私は利用者の生活全体をみることになるわけですが、そのことは、仕事をする上での喜びや楽しさにかかわっています。
 音楽以外の場面と比べて、音楽療法では利用者がとても生き生きしていることが多いのは確かです。あるいは、音楽の場面で、それまでスタッフが考えていたよりも理解力があるのを見つけた利用者もいます。最初は音楽療法の部屋に入れなったのが段々入れるようになり、次第に笑顔が増えていった、そんな利用者もいます。そうした利用者の変化に立ち会えることは、とてもうれしいことです。

Q: 他の職種のスタッフとの連携はいかがですか?

A;生活支援を担当している同僚は、ありがたいことに、音楽療法の中での利用者の変化を同僚が見て、”音楽があってこそ変化が生じた”と言ってくれています。
 私も、音楽の中で見つけた利用者の新たな面や、行動の変化についての情報を、生活支援をしている同僚に伝えています。そうすることで音楽での支援と生活支援とが連携ができています。私の前任者が、生活支援のスタッフとの関係の土台を築いてくれたおかげで、今は、私と同僚たちとは何でも言い合えるいい関係ができています。

Q: 仕事をするのが楽しそうですね!

A: 私は利用者の人たちが大好きですし、彼らと音楽をやるのは本当に楽しいです。また、音楽療法に理解のある職場と同僚に恵まれてもいると感じています。
 幸いなことに、入職してから今まで、職場を辞めたいとか、今日は仕事に行きたくないとか思ったことは全くありません。もちろん、色々な悩みはその時々にありますが、たとえ嫌なことがあっても、セッションの中で利用者の人たちがたくさんのものを返してくれるので、ああ、今日も仕事に来てよかったな、といつも思います。

(インタビュー・構成:二俣泉)