東邦ピアノセミナー全体会


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去る7月26日(日)に行われた第3回東邦音楽大学・東邦ピアノセミナー。今回は、午前中に行われた全体会のレポートです。

今年の全体会は、上田京専任講師による「時代様式に基づくピアノ演奏とは~作曲者が調性に託した想いとその時代背景」と題し、楽曲の調性やさまざまな音律について興味深い話が展開しました。

会場にはごらんのように2台のピアノが置かれていました。2台のピアノをどんなことに使うのかと思いましたが、実はこの2台は異なる方法によって調律されたものだったのです!

1台は、現代において一般的な「12平均律」によって調律されたもの。そしてもう1台は、バッハの時代に行われていた古典調律のひとつ「ヴェルクマイスターの調律法」によって調律されたもの。
上田先生の実演で、さまざまな調の楽曲が古典調律によって演奏されました。まさに調が変わるたびに、異なる性格の響きが生まれます。
会場を見わたすと、なるほどという表情で頷きながら聴いていらっしゃる受講生が大勢いらっしゃいました。

他にも、ルネサンス期の調律法「ミーントーン」で演奏されたショパンの曲の音源などが紹介され、聴きなれない歪んだ響きに会場がどよめく場面もありました。

J.マッテゾン、C.F.D.シューバルト(シューベルト、ではありません。)、E.T.A.ホフマンらの調性格についての研究も、とても面白いですね。例えばシューバルトによれば、変ロ長調は「陽気な愛、善良な道徳意識、希望、よりより世界への憧憬。」ト短調は「不機嫌、不愉快、失敗しそうな計画の強行、不満げな歯軋り、憤りと億劫な気持ち。」など、ずいぶん印象的な言葉が並んでいます。

最後は、上田先生の実演でJ.S.バッハ作曲「平均律クラヴィーア曲集」のさまざまな作品が、調性格に言及しながら演奏されました。また、実はこの曲集は12平均律を想定した楽曲ではなく、日本で「平均律」と翻訳したのは誤訳であるということも紹介され、まさに情報満載、とても濃厚な1時間半でした。

次回は午後の分科会についてレポートします!