モーツァルトのケッヘル番号 60年ぶりの改訂について

〜東邦音楽大学・東邦音楽短期大学では後期実技試験も終わり、春へ向かう陽光の中で今年度の締めくくりの時期を迎えようとしています。今月のピアノダイアリーは、少し専門的な話題に触れてまいります。〜

2024年初夏、モーツァルトのケッヘル番号が実に60年ぶりに改訂され、『ケッヘル目録 2024』(ブライトコップ・ウント・ヘルテル社刊)として発表されました。
ブライトコップ・ウント・ヘルテル社HPの『ケッヘル目録2024』特設ページ:https://www.breitkopf.com/work/20546

モーツァルト研究の権威であるアメリカのニール・ザスロー博士と、オーストリア・ザルツブルク国際モーツァルテウム財団のウルリッヒ・ライジンガー博士との共同作業により完成したこの最新改訂版は、「ケッヘルの初版番号の原点に立ち戻る」、そして「作曲年代順配列への固執を放棄する」という、二つの方針転換を最大の特徴としています。

『ケッヘル目録 2024』の「本編」に収録される作品には K.番号が付与され、大まかに言うと以下のルールが適用されています。
・初版番号を有する曲にはそのまま番号を据え置く
・改訂番号のみを有する断片作品などは改訂3版または6版の番号で管理する
・番号を全く持たない作品(全95曲)には K.627〜K.721 までの新しい番号を付与する
『ケッヘル目録 2024』の「付録」に収録される作品には、付録(Anh.)番号が付与されています。

ちなみに、モーツァルトの最後の作品は《レクイエム K.626》ですが、後から発見されて番号を全く持たない95曲の作品に K.627〜K.721 までの新しい番号を付与するとは、なんと斬新な手法でしょうか!

さて、モーツァルトの作品に付けられるケッヘル番号(K.または KV番号)とは、ルードヴィヒ・リッター・フォン・ケッヘル(1800〜77)に由来するものです。ケッヘルは著名な鉱物学者でしたが、モーツァルトの作品の散逸を防ぐために、1851年から作品目録の計画に着手します。そして1862年に『ヴォルフガング・アマデー・モーツァルトの全音楽作品年代順主題目録』(初版)をブライトコップ・ウント・ヘルテル社から刊行しました。ケッヘルのこの目録によって、モーツァルトが作った音楽作品の全体を把握することが可能になったのです。(また、彼はモーツァルトの作品全集の刊行を強く願っていました。ブライトコップ社と掛け合い、資金の寄付に関して自身の遺言書まで作成し、一生をかけて尽力したことは特記に値します。)

その後、モーツァルトの作品の作曲開始年が変更されたり、それまで失われていた作品が新発見されたり、真正であると信じられていた作品が偽作であることが判るなど、特に20世紀前半には研究に様々な進展が現れるようになりました。1937年にはアルフレート・アインシュタインによって『ケッヘル作品目録』の改訂第3版がもたらされます。ここでは年代順配列が組み替えられ、新たに追加される作品にも年代順に新たな作品番号を割り当てる必要があるという考え方から、二重番号(ケッヘル=アインシュタイン番号)が付与されることになりました。さらに『ケッヘル作品目録』は1964年には第6版を重ね、新たな研究成果が盛り込まれています。

このように、先人たちが苦心しながら改訂を重ねてきた「ケッヘル番号」の仕組みですが、モーツァルトの作品数があまりに多く、そして不明な点も多いために、複雑化の一途を辿るばかりでした。そこで今回の『ケッヘル目録 2024』では、これまでに積み重ねられてきた方針が大きく見直され、簡素化へと舵が切られたわけです。ただし、この新改訂の運用はまだ始まったばかりですので、広く浸透するにはしばらく時間がかかるかもしれません。あるいは社会や人々がこれを受け入れない場合も、絶対に無いとは言いきれません。

いずれにしても、これから先のモーツァルト研究や楽譜出版では、この画期的な『ケッヘル目録 2024』が活用されていくことでしょう。新改訂の成果を直接目にしたとき、私たちは新鮮な驚きに包まれるに違いありません。今後の動向を見守りつつ、モーツァルトの作品を探求していきたいと思います。(浦川 玲子)

短大の授業「アンサンブル」

新しい年を迎え、いよいよ今月は後期のまとめの時期となります。
学科目、専攻実技等の試験に臨むべく、学生達からは目的意識のはっきりとした、気持ち良い緊張感が感じられます。
ピアノダイアリー、今回は短大の学科目から「アンサンブル1」の授業最終日の様子をお伝え致します。

「アンサンブル1」は4手連弾を主要テーマとする演習科目です。
最終日に文京キャンパス50周年記念館ホールにおいて録画・録音を行うことを恒例としています。
各組それぞれ取り組む楽曲は必修とする課題と自由に選択する課題、大体2~3曲を練習し仕上げていきます。
今期は必修課題として4手連弾の超定番であるG.フォーレ作曲の組曲『ドリー』から選曲することを課しました。
今期の受講生は5組。プログラムは次のようになりました。

1. G.フォーレ:組曲『ドリー』 No.5「優しさ」
 S.ラフマニノフ:6つの小品Op.11 No.1「バルカローレ」

2. G.フォーレ:組曲『ドリー』 No.6「スペイン」
 P.チャイコフスキー:組曲『くるみ割り人形』より「花のワルツ」

3. G.フォーレ:組曲『ドリー』 No.3「ドリーの庭」、No.6「スペイン」
 A.ドヴォルザーク:スラヴ舞曲Op.46 No.5 、No.6

4. G.フォーレ:組曲『ドリー』 No.6「スペイン」
 S.ラフマニノフ:6つの小品Op.11 No.2「スケルツォ」

5. G.フォーレ:組曲『ドリー』 No.3「ドリーの庭」
 P.チャイコフスキー:組曲『くるみ割り人形』より「行進曲」

普段の授業は各組レッスン形式で行いました。
どの組も本当によく練習をしており、感心させられることが度々でした。
楽譜にも多くの書き込みがあり、パートナー同士でアイデアを出し合い、それを検討しながら合わせの練習を重ねている日々の様子が感じられました。
実際に録画・録音では、そのような真摯な学習の成果が十分に伝わる内容だったと思います。
皆、立派な仕上がりでしたし、本当に楽しそうに生き生きと演奏している姿が大変印象深いものでした。

さて来週からは実技試験が始まります。
皆さん熱のこもった、真剣な演奏を披露してくれることでしょう。楽しみです。

今年もありがとうございました。

今年はカレンダーが残り少なくなっても気温の高い日が続きましたが、12月に入り、急に季節が早送りされるかのようです。
川越キャンパス図書館前のイチョウが綺麗に色付きました。

気が付けばすっかり日が短くなり、授業が終わる時間にはすっかり夜の帳が下りるようになりました。
学生たちは後期実技試験曲の練習に熱が入っており、川越・文京両キャンパスの練習室には遅い時間まで灯りがついています。

大学4年生と短大2年生にとっては、学生生活最後の実技試験となります。彼らは今までの学びの集大成として、ピアノに向かう練習はもちろんのこと、演奏する作品について深く知るために様々な角度で研究を行います。その一つが実技試験に先立ち提出する「作品ノート」です。
今年のピアノダイアリーでは、この「作品ノート」への取組みについても記事を掲載しましたのでぜひお読みください。

ピアノダイアリー 2024年1月号
https://www.toho-music.ac.jp/pianodiary/20240123/post-3310.html

また、大学4年、短大2年のカリキュラムには「演奏演習」という授業があります。
これは、大学・短大での学びの集大成のひとつとして、すべての専攻生が力を合わせ、これまでの多様な学びをアウトリーチすることにより音楽文化振興に貢献することを目的として実施されています。

今年度は、大学4年生は川越キャンパス・グランツザールに川越市立南古谷小学校の児童の皆さんを招いての演奏会を、そして短大2年生は演奏旅行地である沖縄県の恩納村立恩納小学校での公演を行いました。
さまざまな専攻の学生たちが自分の専攻のみならず得意な技能を生かし、世界でただ一つの特別な演目を作り上げました。ピアノを専門とする学生たちも、ピアノの演奏はもちろん、合唱、ピアノ以外の楽器、演目で用いるメドレーの編曲など、さまざまな場面で力を合わせて公演を成功させました。

演奏演習が終わり、作品ノートを仕上げて提出した後は、いよいよ後期実技試験に向けてラストスパートです。大学・短大の冬休みは長くはありませんが、年明けの授業・レッスンで学生たちが一層成長した姿を見るのが楽しみです。

文京キャンパスロビーでは、毎年恒例のクリスマスツリーが点灯しています。
皆さま、今年もピアノダイアリーをお読みくださりありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。新しい年が皆さまにとって素晴らしいものになりますように。

短大ピアノ指導者コースの授業で「インターンシップ」の成果を共有しました。

本学では「単位認定型インターンシッププログラム」を実践しています。
これは、学生が在学中の一定期間、自分の専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を民間企業・官公庁等の事業所で行い、事前・事後の研修、体験レポート、学内での成果発表会等を通して単位を付与する総合的なカリキュラムです。
2023年には「第6回 学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」にて、全国の音楽大学として初の「入賞」を獲得しています。

「キャリアデザインプログラムアワード」
https://internship-award.jp/report/interview/2023_tohomusic_program/

この夏、東邦音楽短期大学ピアノ指導者コースの社会人学生2名がこのプログラムを利用し、東京文化会館でのインターンシップを体験しました。
東京文化会館は、言うまでもなく日本の音楽文化を担う重要拠点のひとつであり、ここでの就業体験は得難い機会です。
2名の学生は無事に就業体験を終え、10月には本学のカリキュラムで定められた「インターンシップ成果発表会」にてプレゼンテーションを行いました。
そして、その体験を専攻の学生たちと広く共有することを企図して、ピアノ指導者コースの必修科目である「ピアノ指導法」授業でも報告とディスカッションの時間を持つことにしました。


短大ピアノ指導者コース1年 下村温子さん


短大ピアノ指導者コース1年 海老原美子さん

お二人は2週間の就業体験を行いました。期間中には、子供から高齢者まで幅広い層を対象としたさまざまなイベントが開催され、東京文化会館職員の皆様のご指導のもと、連日その準備から当日の運営まで体験しました。
専門的な指導を受けながら普段とは違う立場と視点でイベントを体験することができ、音楽文化に関わることの意義と必要なスキルなど、多くの学びがあったことが報告されました。
インターンシップ期間内には、若手音楽家の登竜門である「東京音楽コンクール」の運営業務も体験し、ミスの許されない緊張感のある審査の現場も目の当たりにしました。

お二人からの発表の後は、他のピアノ指導者コースの学生も交えてディスカッションを行いました。皆さん興味の尽きない様子で非常に活気に満ちた時間となりました。学生たちにとって、卒業後にピアノ講師など、指導者としての仕事はもちろんのこと、音楽文化に関わる幅広い現場で活躍するイメージも共有できたことでしょう。

東邦ミュージック・フェスティバルにて『煌めき!!ピアノコンサート』を開催しました。

記録的な猛暑もようやく過ぎ去り、秋の風が心地よく感じられるようになりました。

2024年10月5日・6日、芸術の秋を彩る「東邦ミュージック・フェスティバル」が川越キャンパスで開催され、地域の皆様、在学生のご家族・ご友人、卒業生・一般の皆様に大勢お越しいただき、両日とも大盛況となりました。

大学・短期大学・大学院のピアノを専門とする学生たちは、今年も2日間にわたり『煌めき!!ピアノコンサート』を開催しました。
このコンサートには、フェスティバルの2週間前に行われた出演者選考会にて選抜された18組・44名が出演し、2台ピアノを中心に、さまざまなピアノアンサンブルの名曲を披露しました。
今回のピアノダイアリーは、コンサートの曲目と出演者、当日の雰囲気を写真とともにご紹介します。

『煌めき!!ピアノコンサート at Studio B』 2024年10月5日 13:00~14:30
1日目は、川越キャンパス16号館3階にあるスタジオBにて開催しました。客席は常に満員で、熱気あふれる雰囲気の中で行われました。

♪ドビュッシー:『小組曲』より 1.小舟にて 3.メヌエット
海老原美子(短大1年) 堀田景子(短大1年)

社会人学生のお二人による、詩的で気品あふれる連弾でコンサートが幕を開けました。

♪W.A.モーツァルト(E.グリーグ編曲):ピアノソナタ ハ長調 KV545 第1、2楽章
甘 弦朋(大学3年) 大橋佳奈(大学4年)

良く知られたモーツァルトのソナタに、ノルウェーの作曲家グリーグによる第2ピアノパートが加えられ、美しくロマンティックな装いとなりました。

♪D.ミヨー:『スカラムーシュ』Op.165bより 3.ブラジルの女
宮本美咲(大学3年)  佐々木彩華(大学4年)

2台ピアノの代表的な名曲です。一転してラテン風の刺激的なリズムで活気あふれる雰囲気となりました。

♪A.ボロディン:歌劇『イーゴリ公』より ダッタン人の踊り
関口優香(大学4年)  坪井円香(大学4年)

ロシアの作曲家ボロディンによるオペラの名場面が、2台ピアノによる華麗な編曲で余すところなく表現されました。

♪三善 晃:2台ピアノのための組曲『唱歌の四季』 朧月夜 茶摘 紅葉 雪 夕焼小焼
浅野凜花(大学4年)  箱崎航平(大学4年)

誰もが知っている日本の唱歌とともに四季の移ろいが表現され、2台ピアノならではの美しい和声が会場を満たしました。

♪A.ローゼンブラット:カルメン・ファンタジー
重川美優(大学2年)  杉谷優太(大学3年)

この作品では、ビゼーの美しい旋律にローゼンブラッドがさらに情熱を注ぎこんでいます。二人の若き演奏者の強い鼓動とパワーが躍動しました。

♪P.デュカス:魔法使いの弟子
アンドリュース瑚彩(大学3年)  田中摩音(大学4年)

この作品はタイトルで示されるように様々な場面が去来します。軽快なスケルツォの拍子に乗って、オーケストラを思わせる色彩豊かな響きが展開されました。

♪M.ウィルバーグ:ビゼーの『カルメン』の主題による幻想曲
大井和奏 (大学2年) 日向野千鶴(大学2年)  工藤琴姫(大学2年)  鹿野陽菜(大学2年)

この日の最後の曲目は2台8手による演奏です。4人の奏者と2台のピアノによる大迫力のアレンジで、壮大にコンサートを締めくくりました。

一日目のコンサートは無事に終了し、演奏者、学生スタッフ、教員全員で記念撮影をしました。

東邦ミュージック・フェスティバルでは、学生たちが日頃の学びで得たことをのびのびと表現しています。
それは、演奏者のみならず、コンサートを運営するスタッフも同様です。

お越しいただいたお客様からは、学生スタッフへもたくさんの励ましとお褒めの言葉をいただきました。ありがとうございます。

『煌めき!!ピアノコンサート at Granz Saal』 10月6日 16:00~18:00

2日目のコンサートは、今年の東邦ミュージック・フェスティバルの最後を飾る演目として、グランツザールで行われました。
前日に引き続き多くのお客様が最後までお聴きくださいました。
この日の公演は音楽ホールでの開催であることに加えて、舞台上のセッティングも頻繁に変わります。
本学「地域連携・演奏センター」職員の方々のご指導のもと、学生スタッフも本格的なコンサート運営の体験を通じて多くのことを学ぶことができました。

♪W.ルトスワフスキ:パガニーニの主題による変奏曲
野口満理奈(大学4年)  吉田有沙(大学4年)

刺激的な不協和音やジャズ風のリズムを表情豊かに表現し、コンサートの幕開けに相応しい活気に満ちた演奏でした。

♪S.プロコフィエフ(M.プレトニョフ編曲):バレエ組曲『シンデレラ』より「シンデレラのワルツ」「ギャロップ」
改藤啓乃(大学4年)   松本佑希乃(大学4年) 

プロコフィエフのバレエ音楽の2台ピアノ編曲です。現代的な不協和音をまといながら詩的でロマンティックな光景が目に浮かぶような演奏でした。

♪J.ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 Op.73第1楽章
岩澤ことね(大学3年)  清原一龍(大学4年)

「ブラームスの田園交響曲」とも言われる作品です。Konzertfach(演奏専攻)のお二人による2台ピアノの演奏により、シンフォニックな響きが作り出されました。

♪M.ラヴェル:『スペイン狂詩曲』より 2.マラゲーニャ 4.祭り
宮本有紗(大学院2年)  新井あやの(大学院2年)

フランスの作曲家ラヴェルによる、スペイン情緒あふれる作品です。2台ピアノの可能性を極限まで広げたラヴェルの技法が、お二人の感性とともに華麗に繰り広げられました。

♪G.ホルスト:組曲『惑星』より 4.木星
斎藤愛実(大学院1年)  奥 光李(大学4年)

イギリスの作曲家ホルストの、おそらく最も有名な作品です。2台ピアノの迫力と、壮麗な中間部のメロディが印象的でした。

♪W.A.モーツァルト:ピアノ三重奏曲 ト長調 KV564 第1、3楽章
菅野爾音(ピアノ、大学4年)  岩本さくら(ヴァイオリン、大学院1年) 卢栀杨(チェロ、大学院1年)

今年の「煌めき!!ピアノコンサート」は、ピアノと弦楽器・管楽器による室内楽を3曲ラインナップしました。賛助出演の学生、研究員の皆さんも、心をこめて全力でこのコンサートに向けて準備してくれました。
モーツァルトのピアノ三重奏では、それぞれの楽器の個性とその調和が存分に表現されました。第3楽章の軽快さは、まさにモーツァルト作品の醍醐味です。

♪G.フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番 ハ短調Op.15 第4楽章
今井風季(ピアノ、大学4年) 加賀竜太郎(ヴァイオリン、大学2年) 佐藤直樹(ヴィオラ、研究員) 井上伸一(チェロ、研究員)

ピアノ四重奏曲の傑作であり、非常な難曲でもあります。室内楽の経験豊かな4人によって、そのリズムと和声に生命が吹き込まれる熱演となりました。

♪L.v.ベートーヴェン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.16 第1楽章
厚川もも(ピアノ、大学4年) 池田一翔(オーボエ、大学院1年) 落合 凜(クラリネット、大学2年) 内山紀佳(ファゴット、大学3年) 寺尾優那(ホルン、大学4年)

ピアノ五重奏は「煌めき!!ピアノコンサート」歴代最大の編成です。音色とアーティキュレーションが美しく調和し楽譜の隅々まで丁寧に表現された演奏で、この時代様式の魅力とベートーヴェン作品の奥深さが会場に満たされました。

演奏終了後は、舞台上セッティング変更の時間を利用して演奏者へのインタヴューも行いました。室内楽の演奏に対する熱い気持ちと、将来への夢を語っていただきました。

♪F.プーランク:シテール島への船出  C.ドビュッシー(レオン・ロケ編曲):アラベスク第1番
達崎桃恵(大学3年)  大坂一馬(大学3年)

再び2台ピアノによる演奏です。フランスの作曲家たちによる非常にピアニスティックな作品で、2台のピアノの音が2人の会話のように聴こえてきました。

♪M.ラヴェル:ラ・ヴァルス
遠藤乙彩(大学3年) 植松姫菜(大学3年)

今年のコンサートの最後を飾ったのは、Konzertfach(演奏専攻)のお二人による演奏です。2台ピアノという編成の魅力と大きな可能性を実感できる、圧巻の演奏で締めくくられました。

こうして今年の「煌めき!!ピアノコンサート」は無事に終了しました。
このコンサートに対する学生たちの意欲は年々高まっていると感じます。また、上級生がこの演奏会に向けて取り組む真摯な姿は後輩たちに素晴らしい刺激を与え、学生たち全員の成長につながっているのは間違いありません。
そして、今年も連日多くのお客様にお聴きいただいたことで、学生たちのピアノへの情熱と一人ひとりの成長は一層確かなものとなりました。この場を借りて心よりお礼申し上げます。
来年度もこのコンサートを続けてまいります。ぜひまた会場にて学生たちを応援してくださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

ピアノデュオ ドゥオールの先生方によるピアノ公開講座を開催しました。

朝晩には虫の音も聴こえ秋の気配を感じられるようになってきましたが、まだまだ蒸し暑い日が続いています。名残り惜しい気持ちの夏休みも終わり、いよいよ後期がスタートしました。

2024年9月9日(月)川越キャンパス・スタジオBにて、ピアノデュオ ドゥオールの藤井隆史先生、白水芳枝先生をお迎えして2台ピアノの公開講座が開催されました。
藤井隆史先生、白水芳枝先生は2004年ドイツでデュオを結成され、国際的な賞を数多く受賞、ピアノデュオを中心とした活発な演奏活動を国内外でされていらっしゃいます。また近年ではピアノデュオの道を切り拓く指導者として後進の指導にも力を注いでいらっしゃいます。
来月開催される「東邦ミュージック・フェスティバル」ではピアノを専門とする学生によるアンサンブルコンサートの企画を準備しており、その前には出演者の選考会も控えています。目前の今回の公開講座は学生にとって絶好のタイミングとなりました。

学内に張り出された講座のポスターでは、ターコイズブルーというのでしょうか、あざやかな青の衣装の先生方を拝見していたので、講座ではどんなお召し物なのかも楽しみにしておりました。そして当日、予想通りおふたりがゴージャスな衣装でスタジオBに登場されると会場の空気も変わりました。ファッショナブルな装いは視覚的にも心躍ります。

講座では6曲ものバラエティに富んだプログラムを用意して下さいました。

・ドビュッシー=デュティユー
 月の光 (ドゥオール使用楽譜:Jobert)
・モーツァルト=グリーグ
 ソナタ C-Dur KV545 第1楽章 (同: Peters)
・ブルグミュラー=フランク
 2台ピアノのための25の練習曲より 「アラベスク」「せきれい」 (同: 全音)
・シューマン=ドビュッシー
 6つのカノン形式による練習曲より第1番 (同: International)
・ミヨー
 スカラムーシュより  1.Vif 3.Brazileira (同: Salabert)
・ルトスワフスキ
 2台のピアノのためのパガニーニの主題による変奏曲 (同: Chester Music)

先ずはソロ曲として有名な《月の光》をデュティユーが妻のために2台ピアノ用に編曲した作品からスタートです。
音の会話のような繊細で華麗でそして迫力のある演奏を存分に聴かせていただきながら、ご夫妻の見事なキャチボールの話術が聴き手をぐいぐい引き込みます。
プログラムに従って作曲家や作品の背景、また演奏する上でのポイントやアイデアをきめ細かく具体的に示してくださいました。デュオ奏者ならではのなかなか伺えないワザやコツも惜しげなくお話くださり、これから選考会に挑む学生やアンサンブルをより深く学びたい人達にとって大変有意義な時間となりました。

【2台ピアノの理解を深められる演奏上のポイント】
■どこの音を聴いていますか?
2台のピアノの中で反響するひとつの空間を見つけてソロとは違う対面の響きを聴いてみましょう。

■どこを見て合わせますか?
吐く息 吸う息は嘘をつきません。目ではなく、肩を見て相手の呼吸を信じましょう。

■音を重ね合わせる感覚を大切に。
単に音と音を合わせるのではなく 相手の音をよく聴き、気持ちを合わせていくイメージで。音楽を一つのものにしていく感覚をもちましょう。

■意見を交わしながら相手を深く知っていきましょう。

■2台ピアノや連弾は音で弾いてみないと分からないことがたくさんあります。ただ話だけや理論で理解するということは難しいのでたくさんの曲に触れてみましょう。

 
6曲のプログラムの中には入門編の紹介もありました。

■シューマン=ドビュッシー
6つのカノン形式による練習曲より第1番

この曲でシューマンが、ペダルピアノという楽器をこよなく愛したことを知りました。写真も見せていただきましたが、不思議な足鍵盤付きピアノです。

■ブルグミュラー=フランク
2台のための25の練習曲より
「アラベスク」「せきれい」
編曲したハンス・フランクはドイツ人ではなく日本人の方でペンネームなのだそうです。

掛け合い、拍感が学べる曲で小さなお子さんと合わせる時の音のバランスに注意が必要と説明がありました。
せきれいってどんな鳥なんでしょう?と藤井先生。すかさず國谷先生が この辺の田圃にいっぱいいますよ! さすが國谷先生です。因みに川越キャンパスには絶滅危惧種のキンランも生息しているようです。

ピアノアンサンブルにはソロではなかなか味わえない新たな音楽を生みだす喜びや魅力があります。
この度の学びから刺激をうけた学生たちには、意見を交わしながらコミュニケーションを深めてお互いが影響しあい、ひとつの音楽を作り上げていくことを楽しんでほしいと思います。
ピアノデュオ ドゥオールの藤井先生、白水先生、ありがとうございました。

定期研究発表演奏会【ソロの部】が開催されました。

7月末から8月上旬にかけて行われた前期実技試験は無事終わりました。
大学・短大の授業・レッスンは夏期休業中ですが、両キャンパスでは学生たちが猛暑にも負けず練習に励む音が聞こえてきます。
9月の後期開始時には、いっそう元気な姿を見せてくれることでしょう。

7月13日(日)定期研究発表演奏会【ソロの部】が、川越キャンパス・グランツザールにて開催されました。

第1部では、附属東邦中学校・高等学校・第二高等学校の3年生から選出された生徒が演奏し、第2部では大学4年生から選出された代表の学生たちが演奏しました。
在学中の専攻実技の研究成果を華やかなステージで披露する、学生たちにとって大きな目標となるコンサートの一つです。
今回のピアノダイアリーは、当日の演奏順に大学4年生の出演者と曲目をご紹介しましょう。

野口満理奈  R.シューマン作曲、F.リスト編曲 「献呈」

吉田有沙  F.リスト 超絶技巧練習曲 第8番「狩」 ハ短調 S.139

菅野爾音  G.フォーレ 夜想曲第4番 変ホ長調 Op.36

改藤啓乃  S.ラフマニノフ  ソナタ第2番 変ロ短調 Op.36 第1楽章(1931年版)

今回演奏した大学4年生はコロナ禍の不安が高まる2021年度に入学し、学業のみならず社会生活のさまざまな面で制約を受けながら学生時代を過ごしてきました。
それから3年余り、今回の演奏会には、在学生はもちろんのこと多くの卒業生、ご家族、音楽指導者の方々がお越しくださり大盛況となりました。
この熱気あふれる雰囲気のなかで、出演者の皆さんはピアノという楽器の素晴らしさが存分に伝わる熱演を披露し、今日まで逞しく成長してきたことを証明してくれました。

終演後のグランツザールロビーでは、あちこちで出演者を囲んで賑やかな輪ができました。
音楽を通じて人々に笑顔が広がる光景は本当に良いものだと実感しました。

これから卒業に向けて、東邦ミュージック・フェスティバル、演奏演習、そして最後の後期実技試験と、まだまだ多くの演奏機会が待っています。
学生の皆さんのさらなる成長と飛躍を大いに期待したいと思います。

「東邦ピアノセミナー」「ピアノオープンキャンパス」が開催されました。

梅雨明け宣言が出て、本格的な夏になってまいりました。この一ヶ月、本学では毎週末たくさんのイベントが行われています。その中で今回のダイアリーでは6月30日(日)に行われた「東邦ピアノセミナー」と7月14日(日)に行われた「ピアノオープンキャンパス」にフォーカスしてレビューしたいと思います。

東邦ピアノセミナーは、今年第17回目を迎え、東邦の夏の風物詩の一つになっています。コロナ禍で中止となった2020年を除き、2006年から毎年積み上げてきた実績は、私たちのちょっとした誇りでもあります。これまで何度もリピートしてご参加いただいた方も少なくなく、今回も多くの皆様にお越しいただき、私共ピアノ教員とともに、“夏のピアノ三昧の一日”を楽しむことができました。

講座1では、浦川玲子専任講師が「モーツァルトのピアノ・ソナタ第11番イ長調KV331〜<トルコ行進曲付き>の解釈と演奏〜」というタイトルで、ライフワークの一つであるモーツァルトの作品について最新のデータとともにコンストラクションや奏法など詳しく解説がされました。

講座2では、國谷尊之教授が「ドビュッシーのピアノ作品〜その音楽語法の変遷と、演奏法の考察〜」というタイトルで、大学時代からの研究対象であるドビュッシーの作品について、時代的変遷や背景、演奏法などについて素晴らしいピアノの実演とともに解説されました。

2つのハイレベルな講座に加えて、ご希望の方は本学教員のレッスンも受講できる素晴らしいセミナーです。来年も多くの方にお目にかかれますことを楽しみにしております。
 
ピアノオープンキャンパスは、本学教員の体験レッスンを受講して、グランツザールでステージ(コンサート)体験ができるというとても贅沢な企画で、2018年に始められたものです。毎年、8月に行っておりましたが、今年度は真夏の猛暑を避けて、7月に時期を移動しました。当日は、曇り空でしたが、過ごしやすい気温で、参加してくださった方々の負担も少なかったように思います。

今回は、未就学児から高校生まで幅広い年齢の方が参加してくださり、グランツザールのステージも華やかで、しかも大変レベルの高いコンサートとなりました。
コンサートに先駆けて、本学ピアノ主任の秦はるひ特任教授とKonzertfach(演奏専攻)3年の岩澤ことねさんによる連弾も披露されました。

多くの方がアンケートに、「音楽大学の中でレッスンが受けられ、コンサートに出演できたことがとてもいい経験になったと」書いてくださいました。
この企画も続けていきたいと思っておりますので、またぜひご参加ください。

今年もオープンキャンパスが始まりました。

今年の関東地方は異例に遅い梅雨入りとなり、気温の差も激しく毎日季節が入れ替わるような天気が続いています。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
コンディションを整えるのが難しい時期ですが、キャンパスには毎日学生たちの元気な声があふれています。

今年度も東邦音楽大学・東邦音楽短期大学「オープンキャンパス」がスタートしました。
オープンキャンパスでは、入学者選抜やカリキュラムについてのオリエンテーション、学生がご案内する「キャンパスツアー」、専攻別プレゼンテーション&音楽活動、学生コンサート、体験レッスン、個別進学相談など、たくさんのコンテンツを準備しています。
6月23日(日)、今年度最初の「東邦音楽大学オープンキャンパス」が開催されました。
当日はあいにく荒れ模様の天気となりましたが、熱心な高校生と保護者の皆様が川越キャンパスを訪れてくださいました。

今回のピアノ体験授業は、中島剛専任講師が行いました。

受験でも演奏する機会の多いベートーヴェンのピアノソナタを例に、楽譜を音楽的に読み取り、楽譜からイメージを膨らませる方法について考えました。また、ヘンレ版などの「原典版」についても分かりやすく解説されました。
体験授業後半では、ピアノ演奏に必要なテクニックのトレーニングについて、良い響きを作るために重要な「脱力」の方法、スケール・アルペジオの練習法、ペダリング等、整理して解説され、受講生の皆さんは真剣に耳を傾けていました。

学生コンサートは東邦音大が誇る音楽ホール「グランツザール」で行われ、ピアノソロはKonzertfach(演奏専攻)4年の清原一龍さんがM.ラヴェルと武満徹の作品を演奏しました。

今年度も、大学・短期大学それぞれ3回、計6回の「オープンキャンパス」が開催されます。各回とも様々な内容を計画しており、学生による演奏も毎回行う予定です。中にはオーケストラによる華やかなコンサートもあり、学生たちは本番に向けて研究と練習に励んでいます。

ぜひオープンキャンパスを通じて東邦での学生生活を実感していただければと思います。
詳細は下記のページをご覧ください。皆様のお越しを学生たちとともにお待ちしております。

7/21(日)開催!東邦音楽大学オープンキャンパス

6/30(日)・7月27日(土)開催! 東邦音楽短期大学オープンキャンパス

8/25(日)開催!東邦音楽大学オープンキャンパス【TOHO SUMMER CONCERT同日開催】

ご挨拶 ~ピアノ主任着任にあたって~

 今年度より、ピアノ専門部会主任を務めさせていただきます秦はるひです。
2021年4月より東邦に奉職させていただきました。
私は大学、短期大学の指導はもちろんのこと、伸び盛りの年代である中学高校生を指導することにも力を入れたいと考え、附属中高生のレッスンも担当しています。
その間、中高の生徒たちの折り目正しい態度、試験時は副科に至るまで能力に応じた真摯な演奏、何より先生方の生徒一人一人に対する細やかで親身なご指導、学生・生徒たちの穏やかな雰囲気、そして大学生はウィーン研修があることなど、目を見開かされる3年間でした。

 ここからは、自己紹介を少し、私は大学に入ったばかりの時に(半世紀前、、)作曲科の人から出来立てホヤホヤの新作の演奏を頼まれて以来、新しい作品に常に興味があります。当時は手書きの楽譜でしたが、今も聴いたこのない作品を読み解く冒険は好きです。リサイタルにはいつも委嘱作品を入れたプログラム。もちろん名だたる名作曲家の作品にも多く接しています。知っているはずの作品でも新たな発見が多く、最近は今まで見えていなかった楽譜上の指示の意味があらためてわかったり、、と楽しい毎日です。好きな作曲家を一人だけ、と言われたら、バッハです。
 
 もう長く若い学生さんたちと一緒に勉強していますが、一緒に考え気がつくことも多く、指導しているというよりは教えてもらっている印象を持ち続けています。
今後は東邦の良さを少しでも多くの方々に知っていただき、そして学生・生徒たちの成長、活躍を楽しみにしながら過ごしていきたいと思っています。
 皆様、ご一緒に東邦をさらに盛り上げてまいりましょう。どうぞよろしくお願いいたします。