「東邦ピアノセミナー」「ピアノオープンキャンパス」が開催されました。

梅雨明け宣言が出て、本格的な夏になってまいりました。この一ヶ月、本学では毎週末たくさんのイベントが行われています。その中で今回のダイアリーでは6月30日(日)に行われた「東邦ピアノセミナー」と7月14日(日)に行われた「ピアノオープンキャンパス」にフォーカスしてレビューしたいと思います。

東邦ピアノセミナーは、今年第17回目を迎え、東邦の夏の風物詩の一つになっています。コロナ禍で中止となった2020年を除き、2006年から毎年積み上げてきた実績は、私たちのちょっとした誇りでもあります。これまで何度もリピートしてご参加いただいた方も少なくなく、今回も多くの皆様にお越しいただき、私共ピアノ教員とともに、“夏のピアノ三昧の一日”を楽しむことができました。

講座1では、浦川玲子専任講師が「モーツァルトのピアノ・ソナタ第11番イ長調KV331〜<トルコ行進曲付き>の解釈と演奏〜」というタイトルで、ライフワークの一つであるモーツァルトの作品について最新のデータとともにコンストラクションや奏法など詳しく解説がされました。

講座2では、國谷尊之教授が「ドビュッシーのピアノ作品〜その音楽語法の変遷と、演奏法の考察〜」というタイトルで、大学時代からの研究対象であるドビュッシーの作品について、時代的変遷や背景、演奏法などについて素晴らしいピアノの実演とともに解説されました。

2つのハイレベルな講座に加えて、ご希望の方は本学教員のレッスンも受講できる素晴らしいセミナーです。来年も多くの方にお目にかかれますことを楽しみにしております。
 
ピアノオープンキャンパスは、本学教員の体験レッスンを受講して、グランツザールでステージ(コンサート)体験ができるというとても贅沢な企画で、2018年に始められたものです。毎年、8月に行っておりましたが、今年度は真夏の猛暑を避けて、7月に時期を移動しました。当日は、曇り空でしたが、過ごしやすい気温で、参加してくださった方々の負担も少なかったように思います。

今回は、未就学児から高校生まで幅広い年齢の方が参加してくださり、グランツザールのステージも華やかで、しかも大変レベルの高いコンサートとなりました。
コンサートに先駆けて、本学ピアノ主任の秦はるひ特任教授とKonzertfach(演奏専攻)3年の岩澤ことねさんによる連弾も披露されました。

多くの方がアンケートに、「音楽大学の中でレッスンが受けられ、コンサートに出演できたことがとてもいい経験になったと」書いてくださいました。
この企画も続けていきたいと思っておりますので、またぜひご参加ください。

今年もオープンキャンパスが始まりました。

今年の関東地方は異例に遅い梅雨入りとなり、気温の差も激しく毎日季節が入れ替わるような天気が続いています。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
コンディションを整えるのが難しい時期ですが、キャンパスには毎日学生たちの元気な声があふれています。

今年度も東邦音楽大学・東邦音楽短期大学「オープンキャンパス」がスタートしました。
オープンキャンパスでは、入学者選抜やカリキュラムについてのオリエンテーション、学生がご案内する「キャンパスツアー」、専攻別プレゼンテーション&音楽活動、学生コンサート、体験レッスン、個別進学相談など、たくさんのコンテンツを準備しています。
6月23日(日)、今年度最初の「東邦音楽大学オープンキャンパス」が開催されました。
当日はあいにく荒れ模様の天気となりましたが、熱心な高校生と保護者の皆様が川越キャンパスを訪れてくださいました。

今回のピアノ体験授業は、中島剛専任講師が行いました。

受験でも演奏する機会の多いベートーヴェンのピアノソナタを例に、楽譜を音楽的に読み取り、楽譜からイメージを膨らませる方法について考えました。また、ヘンレ版などの「原典版」についても分かりやすく解説されました。
体験授業後半では、ピアノ演奏に必要なテクニックのトレーニングについて、良い響きを作るために重要な「脱力」の方法、スケール・アルペジオの練習法、ペダリング等、整理して解説され、受講生の皆さんは真剣に耳を傾けていました。

学生コンサートは東邦音大が誇る音楽ホール「グランツザール」で行われ、ピアノソロはKonzertfach(演奏専攻)4年の清原一龍さんがM.ラヴェルと武満徹の作品を演奏しました。

今年度も、大学・短期大学それぞれ3回、計6回の「オープンキャンパス」が開催されます。各回とも様々な内容を計画しており、学生による演奏も毎回行う予定です。中にはオーケストラによる華やかなコンサートもあり、学生たちは本番に向けて研究と練習に励んでいます。

ぜひオープンキャンパスを通じて東邦での学生生活を実感していただければと思います。
詳細は下記のページをご覧ください。皆様のお越しを学生たちとともにお待ちしております。

7/21(日)開催!東邦音楽大学オープンキャンパス

6/30(日)・7月27日(土)開催! 東邦音楽短期大学オープンキャンパス

8/25(日)開催!東邦音楽大学オープンキャンパス【TOHO SUMMER CONCERT同日開催】

ご挨拶 ~ピアノ主任着任にあたって~

 今年度より、ピアノ専門部会主任を務めさせていただきます秦はるひです。
2021年4月より東邦に奉職させていただきました。
私は大学、短期大学の指導はもちろんのこと、伸び盛りの年代である中学高校生を指導することにも力を入れたいと考え、附属中高生のレッスンも担当しています。
その間、中高の生徒たちの折り目正しい態度、試験時は副科に至るまで能力に応じた真摯な演奏、何より先生方の生徒一人一人に対する細やかで親身なご指導、学生・生徒たちの穏やかな雰囲気、そして大学生はウィーン研修があることなど、目を見開かされる3年間でした。

 ここからは、自己紹介を少し、私は大学に入ったばかりの時に(半世紀前、、)作曲科の人から出来立てホヤホヤの新作の演奏を頼まれて以来、新しい作品に常に興味があります。当時は手書きの楽譜でしたが、今も聴いたこのない作品を読み解く冒険は好きです。リサイタルにはいつも委嘱作品を入れたプログラム。もちろん名だたる名作曲家の作品にも多く接しています。知っているはずの作品でも新たな発見が多く、最近は今まで見えていなかった楽譜上の指示の意味があらためてわかったり、、と楽しい毎日です。好きな作曲家を一人だけ、と言われたら、バッハです。
 
 もう長く若い学生さんたちと一緒に勉強していますが、一緒に考え気がつくことも多く、指導しているというよりは教えてもらっている印象を持ち続けています。
今後は東邦の良さを少しでも多くの方々に知っていただき、そして学生・生徒たちの成長、活躍を楽しみにしながら過ごしていきたいと思っています。
 皆様、ご一緒に東邦をさらに盛り上げてまいりましょう。どうぞよろしくお願いいたします。

2024年度が始まりました。

今年の春は寒暖差が激しく、ここ数年よりもかなり桜の開花が遅れました。
川越キャンパスの桜は、新しい年度に学生たちが集うのを待っていたかのようです。

4月上旬、入学式に続いて「新年度学生オリエンテーション」が行われました。
このオリエンテーションは、週末を挟み10日間にわたって、新入生のみならず全学生を対象に実施されています。

4月8日には、ピアノを専門とする学生を対象としたオリエンテーションを行いました。
東邦音楽大学・東邦音楽短期大学でピアノを学ぶ学生たちが川越キャンパススタジオBに一堂に会し、元気な姿を見せてくれました。
この日のオリエンテーションは、今年度よりピアノ専門部会主任に着任された秦はるひ特任教授による講話から始まり、大学・短期大学でのピアノの学びに必要とされる様々な要素について詳しく解説されました。

ピアノ専門部会主任 秦はるひ特任教授 『ピアノを学修する上での心得』


ピアノ専任教員紹介&担当する授業の紹介


中島裕紀教授による、履修の心得および実技試験内容の解説と注意事項


大学院2年・宮本有紗さんより、大学院の紹介と研究内容についてのお話し(インタビュアー:國谷尊之教授)


大学4年・改藤啓乃さんによる演奏 《ショパン:バラード第1番 ト短調 Op.23》


演奏を終えて、改藤さんへの中島剛専任講師によるインタビュー。
ウィーンアカデミー研修での体験等についてお話しいただきました。

こうして今年度も無事に授業・レッスンがスタートしました。
これからの1年間、学生たちがどんな成長を見せてくれるか非常に楽しみです。
ぜひ今年度も両キャンパスでの演奏会、オープンキャンパス等にお越しいただき、東邦の学びの息吹を感じていただけると幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

退職にあたって

 頬を撫でるような柔らかな風が心地よい季節、見渡せば色とりどりの花たちが今か今かと出番を待っているようです。
 毎年巡る3月、今年も卒業生を送る時となりました。卒業式での凛とした姿を見ますと一人ひとりの学生生活の様子が思い起こされ、いつも胸が熱くなります。そしてこの先も、それぞれが幸せな人生を送って欲しいと願わずにはいられません。
 このような気持ちを40年間繰り返し、このたび私も東邦を卒業することになりました。40年の間に時代は20世紀から21世紀へと変わり、一人一人がコンピューター(スマートフォン)を持ち歩いているという信じられない社会になりました。東邦でも、手書きで提出していた試験曲届、教員が手書きをしていたレッスンの記録簿、学校からの連絡もすべてスマートフォンを通して行うようになりました。何と合理化されたことでしょう。
 その一方で、私たちは東日本大震災を初めとするさまざまな災害や、コロナ禍などを経験し、人が人としてどうあるべきかという重い課題を突き付けられたように思います。東邦ではコロナ禍の折にオンラインで授業やレッスンを行ったものの、他大学がまだオンラインで行っている中、感染防止に努めながら対面に切り替えました。その時の学生達の嬉しそうな顔と生き生きとした演奏は忘れられません。私達が音楽、そして芸術に支えられていることを強く感じた一瞬でした。長い年月生き残ってきたクラシック音楽には、人のさまざまな感情を表現する力、さらにそれを喚起する力が備わっています。この頃クラシックのハードルを下げるべく、若手の優秀なピアニスト達が幅広いジャンルで活動するようになりました。クラシックの裾野を広げるための活躍を期待する一方で、クラシック本来の深い精神性に基づいた演奏も大切にしてほしいと思うこの頃です。歌舞伎の若手役者達が伝統を重んじつつ新しいジャンルに挑戦しているように。

 さて私は40年間の在職中、常に「東邦が好き!」という気持ちを持ち続けることができ、幸せだったと感じています。東邦を一言で言うなら「温かさ」でしょうか。学生も教職員の方々も温かく優しい人柄の方ばかりです。音楽に向き合う厳しさを温かく包み込んでくださったこの環境は、とても居心地の良いものでした。学長先生を初め教職員の皆さま、そして何と言っても学生の皆さんに心より感謝申し上げます。これからも「東邦が好き!」の気持ちを持って東邦を応援し続けたいと思います。
長い間、お世話になりました。

大場 文惠

卒業代表演奏会が開催されます。

大学・短期大学の後期実技試験が全て終了し、キャンパスにはホッとした雰囲気が感じられます。
今回の実技試験期間には、コロナウィルス感染症とインフルエンザの流行に加え、関東地方が降雪に見舞われるなど日々のニュースにやきもきしましたが、学生たちは試験に向けてしっかりコンディションを整え全員が無事に演奏を終えることができました。

私たちは、ステージに立つために多くの時間をかけて準備しますが、本番の時間はあっという間に終わってしまいます。その演奏を成功させるためには、本番の日時に照準を合わせて体調を管理し、万が一にも遅刻することが無いように天候や交通機関の状況にも目を配る必要があります。学生たちがそれを立派に実践していることは大きな喜びです。
こうした取組みによって身に付いた力は、ピアノの演奏に留まらず様々な場面で生きることでしょう。

大学4年生と短大2年生は卒業の日が近づいてきました。
学生生活を締めくくる重要なイベントのひとつである「卒業代表演奏会」が、今年も川越キャンパスグランツザールにて開催されます。

『令和5年度 東邦音楽大学・東邦音楽短期大学 卒業代表演奏会』
2024年3月9日(土) 14:00開演(13:30開場) 東邦音楽大学グランツザール

ピアノを専門とする学生からは、大学4年生の亀岡 沙有さん、斉藤 愛実さん、劉 音嬋さんの3名が出演者に選ばれました。
ぜひ多くの方々にお越しいただき、4年間の学生たちの成長を感じていただきたいと思います。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

2024年もよろしくお願いいたします。

川越キャンパス12号館図書館棟

今年は、元日より「令和6年能登半島地震」による大きな被害が発生し、その後も大きな事故が発生するなど痛ましいニュースが続いています。被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。皆様が一日も早く平穏な生活に戻られることをお祈り申し上げます。

本学園においては、防火防災対策委員会を中心とする全教職員の協働により、学生・生徒が安心して学業・研究に打ち込めるよう、引き続き災害への備えと防災教育の充実に取り組んでまいります。

後期レッスン・授業期間も終盤となりました。学生たちは1月末よりスタートする後期実技試験に向けて練習に熱が入っています。
今回は、大学4年生・短大2年生の卒業に向けての取り組みと、大学院生の「修士論文」「学位審査修了演奏会」、そして、これらの研究のために欠かせない本学図書館についてご紹介します。

卒業年次となる大学4年生、短大2年生は、実技試験演奏曲について調べてレポートにまとめる「作品ノート」に取り組み、昨年12月までに提出を終えました。作品に対する理解が進むことによって演奏のイメージがより的確、具体的になり、練習内容も格段に向上します。冬休み明けには、そうした成果が如実に現れた演奏を聴かせてくれる学生が多いです。

そして大学院2年次生は、2年間の研究の集大成となる「修士論文」の完成と「学位審査修了演奏会」の舞台が近づいています。
「学位審査修了演奏会」は、各大学院生がその研究テーマと関連するプログラムを組み、川越キャンパスグランツザールにて公開演奏会形式で行われます。

2024年2月10日(土) 11日(日) 東邦音楽大学大学院 修士課程学位審査修了演奏会

演奏会の情報はこちらをご覧ください。

大学・短大生による「作品ノート」の中には、論文と称してもおかしくない立派なものも含まれていますが、大学院生にとっての論文は修士の学位を得る根拠となるものですので、その研究内容の水準はもちろん、論文作法、研究倫理の遵守など、さらに厳密なものが求められます。12月に提出された修士論文は全て本学大学院教員による審査を経て完成に至ります。

こうした活動を支える場の一つが図書館です。本学の図書館は文京・川越両キャンパスにあり、専門知識を持つ図書館司書を配置しています。本学図書館司書は、一般的な図書館同様のレファレンスに加えて、音楽大学特有の資料検索のサポートや、「東邦スタンダード」授業の際に図書館活用法や情報検索についてのレクチャーを行ったり、随時学生や教員からの相談にも対応してくれる心強い味方です。

文京図書館「Music Commons」受付カウンター

また、図書館には、これまでの大学院修了生による修士論文と、大学・短大卒業生による「作品ノート」のうち、審査を経て優秀と認められたものが収蔵されています。これらは開架書庫や特設コーナーで学生たちが手に取って読むことができ、これを参考にして後輩の学生たちも自分たちの研究とそのまとめ方への知識を深めていきます。

図書館に保管されている「作品ノート」

思えばひと昔前、ピアノの練習というものは、レッスンで先生から言われた通りに弾けるようにするものと考えられていた向きもありました。
しかし、それでは本当の意味での「演奏」とは言えません。
演奏者自身が音楽作品へのイメージを持ち、それを適切な奏法で楽器から引き出し聴き手に伝えること - 音楽作品そのものについての知識と理解を深めることが、その表現を追求するための原動力となり、聴き手の心を打つ演奏につながります。専門的に幅広い知識を学びながら、音楽家として、そして人間としても大きく成長できることが音楽大学で学ぶ醍醐味です。

東邦音楽大学・東邦音楽短期大学図書館についてのページ
本学図書館長のご挨拶、文京・川越両キャンパス図書館と「畑中良輔ライブラリー」利用案内に加え、資料の配置・探し方についても詳しく掲載されています。ぜひご覧ください。

https://www.toho-music.ac.jp/college/campuslife/library.html

公開講座・コンサート開催のご報告

師走とは思えない暖かな日が続きましたが、キャンパス内の樹々の足元には日毎に落ち葉が積み重なっています。
11月末から12月にかけて、ピアノ専攻では重要なイベントが相次いで開催されました。
先ず11月29日(水)には川越キャンパスグランツザールにて、下田幸二先生による公開講座《マズルカ〜ショパンの魂》が開催されました。
下田先生は、ピアニスト・ショパンの研究者・指導者としてご活躍の方です。

マズルカは美しく魅力的な作品でありながら、日本ではあまり演奏されません。それはリズムの難しさばかりが言われてきたからかもしれません。
3拍子の曲と言えば「ワルツ」「メヌエット」「レントラー」「ポロネーズ」「マズルカ」などがありますが、同じ3拍子の舞曲でもそれぞれに特徴があります。
中でもマズルカは、「クヤヴィアク」「マズル」「オベレク」という異なった性格を持った舞曲に分類されます。
下田先生は、それらの舞曲が実際に現地で踊られている様子を映像で見せてくださり、私達はマズルカのリズムを生きたものとして理解することができました。
ショパンのマズルカはそれらが組み合わされて作品となっています。
またマズルカ以外のショパンの曲の中にも部分的にマズルカが存在していることを知り、祖国を愛したショパンの心情にも触れた思いがしました。
実際の演奏と映像を挟みながらの先生のレクチャーは明快で分かりやすく、興味が益々湧いてきました。

そして最後には二人の学生の公開レッスンもして頂き、どのように演奏すれば良いかも実際に教えて頂きました。
終わった後、学生達からは「マズルカを演奏してみたい」「今まで弾いた曲の中にもマズルカがあって驚いた」という声が多数聞かれました。

12月4日(土)には《東邦音楽大学大学院1年生コンサート》が、川越キャンパスグランツザールで開催されました。
ピアノの出演は、本学学部から進学した2名、社会人1名、中国からの留学生1名の計4名でした。
大学院生にとっては初めての公開での演奏。
曲目はクープラン、バッハ、モーツァルト、ショパン、リスト、ドビュッシー、プロコフィエフ、メシアンと多彩で、それぞれが個性溢れる演奏を繰り広げました。
才能を持った学生達の今後益々の成長が楽しみです。

12月8日(金)はドイツからA.ヴァルドマ先生をお招きして、ピアノの大学院生全員にレッスン(公開)をして頂きました。
先生はケルン音楽大学の名誉教授で、演奏は勿論のこと指導者としても高く評価されています。
レッスンでは学生が弾き終わりますと、「今の演奏で最も良かった所は?」と質問され、学生が答えますと「ではもう一度」と二度ほど弾かせて「どの演奏が最も良かったか」と質問されました。
そして学ぶとは比較すること、自分の演奏を聴くことが大切と終始一貫仰っていました。
ピアノを弾くこと=自分を聴くこと、また曲の最後の音は感謝とお礼の気持ちを込めて演奏する、鍵盤上で音を出さずに(打鍵せずに)弾くことも良い練習になるなど、示唆に富んだ貴重なアドバイスも沢山頂きました。
大学院生だけでなく聴講した学部生も、これからの勉強に役立てて欲しいと思います。

このように多くの学びがあった11月・12月でした。
今年も残り少なくなりました。学生達は来年も勢い良く龍のように高みを目指していくことでしょう。楽しみに見守りたいと思います。

皆様もどうぞ良いお年をお迎えください。

(大場 文惠 記)

「東邦スタンダード」授業にて、大場文惠特任教授による講演会を行いました。


去る11月8日、「~音楽と私、そして東邦~」と題し、本学ピアノ専門部会主任をつとめる大場文惠特任教授による講演会を行いました。今回のピアノダイアリーは、この日の模様をご紹介します。

東邦音楽大学・東邦音楽短期大学では、在学中を通して学ぶ「東邦スタンダード」という科目を設置しています。
この授業は、音大生としてどのように学ぶか、そしてその学びをどのように将来につなげ、社会に生かしていくかを考えながら、必要となるスキルを身につけていく本学独自の学習プログラムです。

短大の後期「東邦スタンダード」では、「音楽人・社会人の話を聴く」と題し、さまざまな分野で活躍する卒業生をゲストに招いての特別講義や、本学の教職員が音楽人生について学生たちに語り、音大での学びと卒業後の未来について考える時間を設けています。
今回は、その一環として大場先生にご登壇いただきました。

大場先生は40年余にわたり東邦にて多くの卒業生を社会へと送り出すとともに、学内外において要職を歴任し日本の音楽文化の発展に尽力されています。

この日の講演では、普段のレッスン、講義では聴くことのできないエピソードも含めて、大場先生の音楽、そして社会に対する向き合いかたについて、様々なお話しを伺うことができました。
学生時代、そして大学を卒業して間もないころの貴重な体験談、それらの体験から得た音楽人生と社会に対する視点、様々な活動と研究を通して得たこと、感じたことなどが語られました。

大場先生の活動の中での一貫した姿勢は「断らない」ということでした。
自分にとって未知のことや、その時点での経験や関心と異なることであっても、何事も断らずに取り組んでいく・・それにより、想像もしなかった新たな世界や人々との出会いが生まれて行きます。
大場先生の終始穏やかで丁寧な語り口ながら非常に刺激的な内容の講演に、学生たちは惹き込まれ真剣に耳を傾けていました。

後半では、東邦において客員教授として長く奉職された畑中良輔先生についてのお話を伺うことができました。
世界的な声楽家であった畑中先生は極めて幅広い分野に造詣が深く、声楽、作曲、指揮、教育、文筆活動など非常に精力的かつ多彩な活動をされていました。
大場先生は、声楽曲のピアノパートの演奏で畑中先生のレッスンを長年受講されました。今回の講演では、レッスンのみならず、レッスン以外の時間での畑中先生のお言葉や、そのお人柄、芸術家としての素晴らしい人間性について、大場先生から直接お話を伺う貴重な機会となりました。

本学川越キャンパス図書館には、畑中先生が2012年に世を去られた後、ご遺族のご厚意により畑中先生が生前に所蔵していた蔵書など多くの資料のご寄贈を受け開設された「畑中良輔ライブラリー」があります。
大場先生はその資料がいかに貴重なものであるかについてもお話しされ、学生たちに「畑中良輔ライブラリー」にぜひ触れてほしいと呼びかけられました。

東邦音楽大学川越図書館『畑中良輔ライブラリー』
https://www.toho-music.ac.jp/college/campuslife/library/hatanataryousukelibrary.html

講演会の当日は、爽やかな秋晴れとなりました。大場先生は、詩人・八木重吉の詩集「秋の瞳」より3つの詩を選び、朗読を織り交ぜながらお話を進められました。これらの詩は、畑中良輔先生が作曲された『八木重吉による五つの歌』の歌詞でもあります。芸術の秋にふさわしい空気が会場に満たされました。
(國谷尊之 記)

東邦ミュージック・フェスティバル2023『煌めき!!ピアノコンサート』2公演を終えて

樹々の葉もようやく黄や赤に色づきはじめ、空に浮かぶ雲にも秋らしさが感じられる季節となりました。

前回のピアノダイアリー9月号でお知らせいたしました通り、本学においては10月7日(土)・8日(日)の二日間にわたり「東邦ミュージック・フェスティバル2023 ”いみじき薫陶仰ぎつつ”」が開催されました。そして、ピアノを専門とする学生たちによる『煌めき!!ピアノコンサート at Studio B』『煌めき!!ピアノコンサート at Granz Saal』の2公演を、おかげさまで大盛況のうちに終えることができました。
スタジオB公演には119名、グランツザール公演には213名のお客様にご来場いただきましたことを、ここにご報告させていただきます。
応援してくださいました全ての皆様、本当にありがとうございました。

今回、両公演あわせて計34名のピアノを専門とする学生と、他専攻からの賛助出演4名が、さまざまなプログラムを披露し感性豊かに自己表現してくれました。
ピアノアンサンブルには独奏ではなかなか味わえない刺激や面白さ、特別な魅力があります。出演する学生たちは、それこそ夢中になって合わせやパート練習に取り組んでいました。普段できないピアノアンサンブルを仲間と心底楽しみたい!新しい自分を発見したい!という彼らの意気が、会場でお聴きになるお客様の心にも伝わったのではないでしょうか。

また、リーダーを始めとして司会や舞台裏方、受付・会場スタッフの学生計11名の大活躍も、コンサート開催における大事な一面でした。そこでは、普段のピアノへの取組みによって培われた「綿密な計画による<進行>」という力も存分に生かされたことでしょう。
スタッフ学生たちはそれぞれの持ち場で明るい笑顔を絶やさずに、丁寧に細やかに対応しながら、大いに実力を発揮してくれました。彼らが初めてのことに挑戦して得られる醍醐味や、舞台を裏側から支える楽しさを味わってくれたのであれば、今回の企画は大成功であったと言えるでしょう。

『煌めき!!ピアノコンサート at Studio B』
2023年10月7日(土)15:30開演

1.Pトリオ
永井亜依(大学3年)寺尾優那(賛助・Hrn.大学3年)安藤 桃(賛助・Vl.大学2年)
J.ブラームス:ホルン三重奏曲 変ホ長調 Op.40 第1楽章

2.連弾
上原美樹(アドバンスコース2年) 市川舞子(短大1年)
P.I.チャイコフスキー(S.ラフマニノフ編曲):バレエ『眠れる森の美女』より ワルツ

3.2台4手
宮本美咲(大学2年) 佐々木彩華(大学3年)
C.サン=サーンス:死の舞踏 Op.40

4.2台4手
関口優香(大学3年) 坪井円香(大学3年)
M.インファンテ:『アンダルシア舞曲』より 1.リズミックに 3.優雅に

5.2台4手
菅野爾音(大学3年) 改藤啓乃(大学3年)
S.ラフマニノフ:組曲第2番 Op.17より 3.ロマンス 4.タランテラ

6.2台4手
佐脇千晶(短大2年) アンドリュース瑚彩(短大2年)
W.A.モーツァルト:2台ピアノのためのソナタ ニ長調 KV448 第1楽章

7.2台8手
劉 音嬋(大学4年) 石田りさ(大学4年) 木野内真帆(大学1年) 浅野凛花(大学3年)
F.メンデルスゾーン(F.ヘルマン編曲):『フィンガルの洞窟』序曲 Op.26

8.2台8手
奥 光李(大学4年) 斎藤愛実(大学4年) 大畑風花(大学2年) 日向野千鶴(大学1年)
B.スメタナ(J.シーグニッツ編曲):交響詩『わが祖国』よリ モルダウ

公演を終えて

『煌めき!!ピアノコンサート at Glanz Saal』
2023年10月8日(日)10:15開演

1.2台4手
野口満理奈(大学3年) 吉田有沙(大学3年)
M.ラヴェル:『スペイン狂詩曲』より 2.マラゲーニャ 4.祭り

2.2台4手
亀岡沙有(大学4年) 杉谷優太(大学2年)
J.ブラームス:2台ピアノのためのソナタへ短調 Op.34b 第1楽章

3.2台4手
松本佑希乃(大学3年) 田中摩音(大学3年)
A.スクリャービン:2台ピアノのための幻想曲 イ短調

4.2台4手
曽根原真理 (アドバンスコース2年) 中平なつこ(短大2年)
三善 晃:2台ピアノのための組曲『唱歌の四季』より 朧月夜 紅葉 雪 夕焼小焼

5.Pトリオ
箱崎航平(大学3年) 岩本さくら(賛助・Vl.大学4年) 井上伸一(賛助・Vc.研究員)
L.v.ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第3番 ハ短調 Op.1-3 第1楽章

6.2台4手
宮本有紗(大学院1年) 新井あやの(大学院1年)
S.プロコフィエフ(M.プレトニョフ編曲):バレエ組曲『シンデレラ』より
シンデレラのワルツ ギャロップ

7.2台8手
遠藤乙彩(大学2年) 清原一龍(大学3年) 岩澤ことね(大学2年) 植松姫菜(大学2年)
B.スメタナ:2台ピアノ8手のためのソナタ

さて、今回の2公演が終了してまだ日は浅いのですが、学生たちはもうすでに来年(!)のコンサートあるいはその選考会を見据えて、あれやこれやとピアノアンサンブルの楽曲を探したり選んだりし始めています。学生たちの意識の中に東邦ミュージック・フェスティバルの中の『煌めき!!ピアノコンサート』という存在がしっかりと根付き、切磋琢磨の源となっていることは、非常に喜ばしいことです。彼らのさらなる飛躍を、皆様にもぜひ見守っていただきたく願っております。