中村洋子先生によるピアノ公開講座が開催されました。
2016年11月7日、川越キャンパスにて、作曲家の中村洋子先生によるピアノ公開講座が開催されました。
中村洋子先生は、「無伴奏チェロ組曲第1~6番」「チェロ二重奏のための10の曲集」が、ベルリンの歴史あるリース&エアラー社より日本人作曲家として初めて出版され、ベルリンフィル首席奏者W.ベッチャーの演奏によるCDがリリースされるなど世界的に活躍していらっしゃいます。また、全国各地で講座を開催、著書も多数出版され、そのいずれも好評を博しています。
今回は本学の川越キャンパスにて講座が実現することとなり、在学生はもちろんのこと、多くの卒業生も聴講に訪れ、会場のスタジオBは満員の盛況となりました。
今回のテーマは「愛らしくシンプルに見える『インヴェンション第1番』は『平均律第1番』も支配している」という、とても興味深いものでした。
中村先生は作曲家としてご活躍中であるのはもちろんですが、大作曲家たちの自筆譜についても詳しく研究し、それに関する著書も出版していらっしゃいます。今回は、J.S.バッハの自筆譜の書法に関するオリジナル資料を、わざわざこの講座のためにご準備くださいました。
『インヴェンション第1番』『平均律第1番』の自筆譜を注意深く調べることにより、そこに様々な音楽的な意味を読み取ることが出来ることを、とても分かりやすく具体的にお話くださいました。
大変親しみやすい曲集である『アンナ・マグダレナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集』についてもお話があり、作品の分析にとどまらず、J.Sバッハが家族をとても大切にしていたこと、また、アンナ・マグダレナ・バッハとの結婚式での来客への素晴らしいもてなし等、J.S.バッハのお人柄についてもお話がありました。
B.バルトーク、E.フィッシャーら、偉大な音楽家たちによる校訂版についても学びました。彼らがどのようにJ.S.バッハの音楽を読み取っているかについて知り、また、J.S.バッハのお人柄とも相俟って、彼がいかに楽譜を大切に記していたのかを理解することができました。
中村洋子先生は、自筆譜を探求し作品を分析することによって、演奏への多くのヒントを得ることができることを、具体的な例をあげてお示しくださいました。また、それによってピアノを弾くことや音楽を学ぶことの楽しみを得ることができるというお話は、学生たちの心に深く刻まれたことでしょう。