「東邦スタンダード」授業にて、大場文惠特任教授による講演会を行いました。


去る11月8日、「~音楽と私、そして東邦~」と題し、本学ピアノ専門部会主任をつとめる大場文惠特任教授による講演会を行いました。今回のピアノダイアリーは、この日の模様をご紹介します。

東邦音楽大学・東邦音楽短期大学では、在学中を通して学ぶ「東邦スタンダード」という科目を設置しています。
この授業は、音大生としてどのように学ぶか、そしてその学びをどのように将来につなげ、社会に生かしていくかを考えながら、必要となるスキルを身につけていく本学独自の学習プログラムです。

短大の後期「東邦スタンダード」では、「音楽人・社会人の話を聴く」と題し、さまざまな分野で活躍する卒業生をゲストに招いての特別講義や、本学の教職員が音楽人生について学生たちに語り、音大での学びと卒業後の未来について考える時間を設けています。
今回は、その一環として大場先生にご登壇いただきました。

大場先生は40年余にわたり東邦にて多くの卒業生を社会へと送り出すとともに、学内外において要職を歴任し日本の音楽文化の発展に尽力されています。

この日の講演では、普段のレッスン、講義では聴くことのできないエピソードも含めて、大場先生の音楽、そして社会に対する向き合いかたについて、様々なお話しを伺うことができました。
学生時代、そして大学を卒業して間もないころの貴重な体験談、それらの体験から得た音楽人生と社会に対する視点、様々な活動と研究を通して得たこと、感じたことなどが語られました。

大場先生の活動の中での一貫した姿勢は「断らない」ということでした。
自分にとって未知のことや、その時点での経験や関心と異なることであっても、何事も断らずに取り組んでいく・・それにより、想像もしなかった新たな世界や人々との出会いが生まれて行きます。
大場先生の終始穏やかで丁寧な語り口ながら非常に刺激的な内容の講演に、学生たちは惹き込まれ真剣に耳を傾けていました。

後半では、東邦において客員教授として長く奉職された畑中良輔先生についてのお話を伺うことができました。
世界的な声楽家であった畑中先生は極めて幅広い分野に造詣が深く、声楽、作曲、指揮、教育、文筆活動など非常に精力的かつ多彩な活動をされていました。
大場先生は、声楽曲のピアノパートの演奏で畑中先生のレッスンを長年受講されました。今回の講演では、レッスンのみならず、レッスン以外の時間での畑中先生のお言葉や、そのお人柄、芸術家としての素晴らしい人間性について、大場先生から直接お話を伺う貴重な機会となりました。

本学川越キャンパス図書館には、畑中先生が2012年に世を去られた後、ご遺族のご厚意により畑中先生が生前に所蔵していた蔵書など多くの資料のご寄贈を受け開設された「畑中良輔ライブラリー」があります。
大場先生はその資料がいかに貴重なものであるかについてもお話しされ、学生たちに「畑中良輔ライブラリー」にぜひ触れてほしいと呼びかけられました。

東邦音楽大学川越図書館『畑中良輔ライブラリー』
https://www.toho-music.ac.jp/college/campuslife/library/hatanataryousukelibrary.html

講演会の当日は、爽やかな秋晴れとなりました。大場先生は、詩人・八木重吉の詩集「秋の瞳」より3つの詩を選び、朗読を織り交ぜながらお話を進められました。これらの詩は、畑中良輔先生が作曲された『八木重吉による五つの歌』の歌詞でもあります。芸術の秋にふさわしい空気が会場に満たされました。
(國谷尊之 記)