第11回『東邦ピアノセミナー』が開催されました

梅雨明けを迎えて間もなくの7月23日(日)、本学文京キャンパスにおいて、第11回東邦音楽大学『東邦ピアノセミナー』が開催されました。

この『東邦ピアノセミナー』は、ピアノ指導ならびに音楽に携わる方々や本学卒業生を対象に、回を重ねてまいりました。毎年大勢の方々が本セミナーにご参加くださり、リピーターの方々も多くいらっしゃいます。

今年から新タイムテーブルが導入され、お昼の12時30分スタートとなりました。最初に、短いオープ二ングセレモニーに続けて学生によるコンサートが行われました。本学の現役学生たちの勉学の成果を参加者の皆さまにご覧いただき、たくさんの応援の拍手をいただきました。

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S.ラフマニノフ /
ソナタ 第2番 変ロ短調
作品36(1931年版)より
第1楽章
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N.カプースチン /
8つの演奏会用エチュード 作品40より
4.回想
5.冗談
6.フィナーレ

 

次に13時15分より、小林律子准教授による講座1「心に響く演奏表現をめざして〜リズム感〜」が行われました。古代ギリシャ時代まで遡ってリズムの定義を再確認するところから始まり、誰もが知っている楽曲を例に、拍節や拍子について詳しく解読していきました。

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続いて15時より、野田説子専任講師による講座2「シンギングトーン〜響き歌う音〜を求めて」が行われました。歌う音や歌う響きを作り出すことの意味やレガート奏法、そして音でしか表現し得ない音楽への深い理解へと繋がる、有意義な学びの時間となりました。

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毎年好評の個人レッスン枠は、今年は午前中と午後の時間帯に講座と並行して設けられ、多くの卒業生や一般の方々のご参加により白熱したレッスンが繰り広げられました。

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最後に、恒例の懇親会では、一日を振り返り互いに労いつつ、一同飲み物で乾杯、軽食をつまみながら笑顔と会話の花が咲き、楽しい時間はあっと言う間に過ぎていきました。実り多きセミナーと相成りました。

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東邦ピアノセミナーにご参加くださいました皆さまへ、この場をお借りして心より感謝申し上げます。

「Konzertfach(演奏専攻)」のコンサートが開催されました。

今年度より「演奏家コース」から名称変更した「Konzertfach(演奏専攻)」のコンサートが7月15日(土)の午後、グランツザール(川越キャンパス)で開催され6名のピアノの学生が出演しました。

1年生3名は、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンを演奏しました。入学して3か月ほどで迎えた舞台でしたが、それぞれの持ち味が十分に発揮され、今後の成長に期待が高まりました。2年生の2名は、バッハ、ベートーヴェン、メンデルスゾーン等を演奏しました。組曲、変奏曲、ソナタと様々な形態の作品でしたが、それぞれの構成、特徴を理解した上での演奏はスケール感があり、日頃の勉強ぶりが伺えました。3年生1名は、ベートーヴェンとリストの作品でした。美しく伸びやかな音がホールの隅々まで響き渡り、ホール内の空気が音楽と共に変化していくのを感じました。これはまさにプロの演奏を聴いている時に味わう感覚でした。

「Konzertfach」の学生は、毎週90分のレッスンに加え、年に2度のウィーンでの研修、コンサート等をこなすことで大きな成長を遂げるのでしょう。心よりエールを送りたいと思います。

次回の演奏会は11月の予定です。一般公開していますので、皆様どうぞ足をお運びください。

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宇佐川 真由
F.ショパン/
即興曲 第2番 嬰へ長調 作品36
スケルツォ 第1番 ロ短調 作品20

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王 成
L.v.ベートーヴェン/
ピアノ ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2

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長谷川 芽唯
W.A.モーツァルト/
ピアノ ソナタ ヘ長調 KV332

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片山 瑶季
J.S.バッハ/イギリス組曲 第2番 イ短調 BWV807
F.メンデルスゾーン/厳格なる変奏曲 作品54

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吉澤 木乃芽
L.v.ベートーヴェン/ピアノ ソナタ 第7番 ニ長調 作品10-3
F.メンデルスゾーン=S.ラフマニノフ/「真夏の夜の夢」より スケルツォ

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安田 友利
L.v.ベートーヴェン/ピアノ ソナタ 第11番 変ロ長調 作品22
F.リスト/バラード 第2番

「楽器の特性と機能」の講義にて、ピアノについて学びました。

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東邦音楽大学・東邦音楽短期大学では、様々な特色あるカリキュラムを実践しています。

先日、東邦音楽短期大学において、ピアノという楽器について深く知るための授業が行われましたのでご紹介します。
この講義は「楽器の特性と機能」と題し、多種多様な楽器について各楽器の専門家がリレー方式でレクチャーを行っています。その一環として、今回は2回にわたってピアノに関するレクチャーが行われました。

まず第1回では、ピアノの歴史と機能、メンテナンスの基礎知識について学びました。ピアノは1709年頃、イタリア人のクリストフォリによって発明され、今日に至るまで様々な改良を積み重ねてきました。初期のピアノが当時の代表的な鍵盤楽器であるチェンバロとクラヴィコードの長所を兼ね備えるものとして発明されたことや、ベートーヴェンを始めとする大作曲家たちと当時の楽器製作者たちの熱意や創意工夫により改良を重ねられてきたことを学びました。
お二人の調律師の方々にもお越しいただき、ピアノの構造や機能、「調律」「整調」「整音」の3つの要素からなるメンテナンスについてお話を伺った後、実際にピアノ内部のアクション機構を取り出し、分かりやすく解説していただきました。
また、本学所蔵のクラヴィコードの実物も展示され、特有の「ベーブンク奏法」(鍵盤を指で揉みこむことによって表現する一種のビブラート奏法)を学生たちが実際に試してみることもできました。

第2回では、グランドピアノとアップライトピアノの比較を行いました。19世紀に入り小型のピアノへの需要が高まったことから発明されたアップライトピアノについて、本来横向きである楽器にどのような工夫をこらして縦型の仕組みを実現したのか、実際に両者のピアノの内部が見えるように解体して比較を行いました。アップライトピアノの内部の様々な工夫を知るとともに、改めてグランドピアノが幅広い表現力を持っていることについても理解を深めました。

それぞれの講義の後半では学生たちが机を離れてピアノの周りに集まり、普段は見ることができない楽器の内部構造に触れながら教員・調律師にさまざまな質問をするなど、非常にアクティブな学びの時間を過ごしました。

第11回東邦音楽大学 東邦ピアノセミナー お申込み受付中です。

毎年7月下旬に文京キャンパスにて開催している「東邦ピアノセミナー」。
今回も講座、レッスン、懇親会、学生によるコンサートなど、さまざまな内容を盛り込んで行う予定です。

「講座1」を担当する小林律子先生は、リサイタル等のソロ活動に加えて室内楽の演奏活動・研究も精力的に行っており、本学ではピアノ実技レッスンとともにアンサンブルの講義も担当しています。この講義は毎年多くの学生が履修し大変な人気です。
今回の講座は「心に響く演奏表現をめざして -リズム感-」と題し、リズムに焦点を当ててお話しされます。「和声やメロディーを統括し、かつ手綱を握る存在であるリズム」・・音楽を形成していく上でのリズムの役割、内在する力を再考し、その表現について実例を交えて検証する大変興味深い内容です。

「講座2」を担当する野田説子先生は、ピアノをはじめとする西洋音楽に精通されているのはもちろんですが、東洋の音楽についても研究し、実際にご自身で東洋の楽器も演奏されます。今回の講座では「シンギングトーン~響き歌う音~を求めて」と題し、音楽を成り立たせる「音」に目を向けてシンギングトーンへのアプローチを探っていきます。私たち日本人がピアノで西洋の「うた」を表現することへの道のりについて、洋の東西を問わず研究を深められている野田先生がどんなアプローチをされるかとても楽しみです。

今回の東邦ピアノセミナーでは、「学生によるコンサート」として、大学4年次生2名による演奏も行います。また、講座終了後に行う懇親会(参加無料)では、ご参加の皆様と気軽な交流の場を持ちたいと思います。セミナーの内容についての自由なディスカッション、最新の音楽教育の潮流と、現在の東邦音楽大学・東邦音楽短期大学での教育課程についての情報交換、卒業生の方々との懐かしい会話など、楽しく有意義な時間を過ごしたいと思います。ぜひご参加ください。

第11回東邦音楽大学 東邦ピアノセミナー
日時:平成29年7月23日(日)10:00~
会場:東邦音楽大学 文京キャンパス
対象:ピアノ指導者、音楽に携わる方、本学卒業生
→詳しくはこちらのページをご覧ください。

お申し込みは平成29年7月7日(金)PM5:00まで受付中です。各講座、レッスンとも定員になり次第締め切らせて頂きますので、お早めにお申し込みください。

新年度を迎えて ーさくらー

桜の季節が近づくと、私たち日本人はにわかに心がざわめきます。冬の頃すっかり葉を落として幹や枝だけになった桜の木立。ひっそりと無言の佇まいからは何も見えませんが、新しい命が目覚める準備をしていたのですね。蕾がほころびだすと瞬く間にあたり一面、薄桃色の世界になります。

今年も川越、文京キャンパスの桜たちは、学生の皆さんの新しい門出に彩りをそえてくれました。

桜の花びらが舞い散る中、学生たちは~さくら~に後押しされて人生の大切な時を体験します。

学生一人ひとりが、これから取り組む音楽や学業に向けて、意欲を新たにしたことと思います。

人生に寄り添ってくれる桜。

皆さんの「今年見る桜」はどんなでしたか。

♪♪♪

ご存知のとおり、日本を代表する曲に「さくら さくら」があります。

時代によって三種類の歌詞が教科書で使われているようですが、ルーツはお筝の入門曲。
旋律の宮音(主音に近い)をミとする日本音階が使われています。

有名なプッチーニのオペラ「蝶々夫人」の第一幕にこの「さくらさくら」をはじめ「お江戸日本橋」「君が代」などの日本の旋律が登場します。

明治37年にミラノのスカラ座で初演されたとありますから海外でも古くから知られていたということでしょう。

旅立ちの日

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3月18日(土)川越キャンパスグランツザールにて、東邦音楽大学・東邦音楽短期大学の卒業式が行われました。

学生たちの旅立ちの日を祝福するように、川越キャンパスは柔らかな春の日差しに包まれました。

学生たち、そして教職員は、4年間もしくは2年間の日々を思い出しながら卒業式に臨みました。たくさんの経験を経て、時には困難を乗り越えて、大きく成長した学生たちの姿がありました。

学長式辞での、「皆さんには、シンプルにこの言葉を贈ります。『また会いたい』と思われる人になってほしい」というメッセージは、一人一人の胸に深く記憶されたことと思います。

卒業式が終わると、グランツザールの外では学生たちが青空の下で記念写真をとったり、恩師のもとに駆け寄り学生生活最後の会話を交わしたりします。達成感、幸せな気持ち、名残惜しさ・・たくさんの思いが詰まった貴重な時間です。

東邦で学んだ様々なことや、かけがえのない友人たちとの思い出を胸に、皆これから立派な音楽人として活躍してくれることでしょう。ご卒業された皆様の人生が幸い多く充実したものとなるよう、これからも応援しています。

そして、音楽の絆は簡単に消えてしまうことはありません。またお会いしましょう!

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春の足音

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まだまだ寒い日が続いていますが、立春も過ぎ、春の足音が徐々に近づいているようです。川越キャンパス近くでは、霜柱の間からかすかに緑が芽吹いていました。

 「春は名のみの風の寒さや」で始まる「早春賦」は、作曲家中田喜直氏の父中田章氏が1913年に発表し、100年以上の時を経た現在でも、歌い継がれている名曲です。
1913年というと、十五代将軍徳川慶喜の没年であり、音楽界では、日本で初めてベートヴェンの後期のソナタを演奏したと言われている久野久女史が、純国産ピアニスト第一号として活躍していた頃です。
ちょうど西洋では、ドビュッシーがプレリュード第2集やエチュードを作曲していた頃と重なります。当時の日本では、音源や情報の少ない西洋音楽に対して、命を削る思いをしてひたすらひたむきに取り組んでおり、その精神と姿勢は、情報の溢れる現代に生きる私たちにも、大いに刺激を与えてくれるものと思います。

 さて、大学・短大では、学生たちがその若いエネルギーを音に込めながら、後期実技試験に臨みました。大学では、4年間に前期後期合わせて8回、短大では2年間に4回の実技試験がありますが、そのひとつひとつのハードルを越えるたびに、学生たちは大きく成長しています。
人は、適正な負荷によって成長をするものです。
ピアノを演奏するためには、多くの要素を統合して取り組むことが必要なため、ピアノ演奏に情熱を傾けることは、音楽的にはもちろんのこと、思考面や精神面など人間的に想像を超える成長をもたらします。
そんな過程を私たち教員は、常に温かく丁寧にサポートしていきたいと思っております。

 最後に蛇足ですが、中田章氏には、冒頭の「早春賦」の発表から10年後の1923年に、息子喜直氏が誕生しました。
その後喜直氏は、「夏の思い出」「小さい秋見つけた」「雪の降る街を」など、四季折々の名ヒット曲を作曲しましたが、「春」だけは、父の「早春賦」に勝るヒットがなかったとご本人が謙遜しておられたことは(実際には「さくら横ちょう」など名曲があります)、父上への敬愛の情でもあるように感じます。

東邦キャンパス体験開催のお知らせ

1月下旬となり寒さの厳しい毎日ですが、皆様お元気でいらっしゃいますか?

後期の授業も終わりに近づき、学科目試験に続いて、いよいよ実技試験期間がやってきます。文京・川越両キャンパスの練習室からは、学生たちが実技試験に向けて練習を重ねる音が響いてきます。

寒さを吹き飛ばすような、学生たちの熱い気持ちが伝わってきます。

さて今回は、3月に開催予定の「東邦キャンパス体験」に向けての学生たちの取り組みについてご紹介します。

来る2017年3月11日(土)川越キャンパスにて、3月18日(土)文京キャンパスにて、恒例の「東邦キャンパス体験」が開催されます。

当日は体験レッスン、個別相談はもちろんのこと、様々なコンテンツを用意しています。今回ぜひご紹介したいのは「学生による専攻プレゼンテーション&学生と語ろう」です。これはオープンキャンパス委員の学生たちが中心となり、来場者の方々に東邦での学生生活について学生の目線からご紹介するコーナーです。

将来先輩になるかもしれない学生たちから直接授業やレッスンについていろいろなお話を聞くことができ、安心して受験に臨むことができた、という声もたくさん届いています。

ピアノの練習室の借り方や、定期試験の様子(どんな曲を選ぶか、会場の様子、服装は・・)等々、時間内では語りきれないほど盛り上がることもあります。参加者の皆さまと会話が弾むと、学生たちもとても喜んでいます。

オープンキャンパス委員会は昨年末、卒業が近づいた先輩たちから後輩たちへとバトンが引き継がれました。1年生の新メンバーも加入して、さらに良い内容にしていこうと頑張っています。

3月11日(土)川越キャンパスの開催に向けては大学の学生たち、3月18日(土)文京キャンパスの開催に向けては短期大学の学生たちが、映像資料を作るなど、工夫をこらして準備を進めています。ぜひお気軽に両キャンパスにお越しください。お待ちしております。

詳しくは、以下のページをご覧ください。

東邦音楽大学「東邦キャンパス体験」 ⇒ 詳細はこちら
2017年3月11日(土)川越キャンパス 14:00~16:00

東邦音楽短期大学「東邦キャンパス体験」 ⇒ 詳細はこちら
2017年3月18日(土)文京キャンパス 14:00~16:00

※無料体験レッスン以外のコンテンツはお申し込みいただかなくても、当日、入退場自由でご参加いただけます。
※無料体験レッスンのみのご参加もOKです。どうぞご活用ください。
※日程や時間は変更になる場合がございます。

年の瀬に・・

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今年も残すところあと少しとなりました。

文京キャンパスのホワイエにはツリーのイルミネーションがお目見えしています。

大学院・大学・短期大学の卒業年次生にとって、12月は文章と格闘する日々でもあります。大学院生は「修士論文」、大学・短大生は「作品ノート」を提出することが修了および卒業認定のために重要な課題となっており、まさにこの12月中にその提出期限が設定されているからです。

大学生と短期大学生の「作品ノート」には論文としての厳密な様式指定はありませんが、学生たちの多くは論文に近い仕上がりの「プチ論文」とでも呼べるものを書き上げます。この「作品ノート」では、卒業試験で演奏する作品について歴史的な背景、作曲家のことを調べ、また楽曲の構成や内容の分析等を行い、それらを文章化していきます。このような作業に慣れていないと皆四苦八苦!大変な状況になります。

ただ楽器に向かうだけではなく論理的な側面から作品を見たり、歴史を知り、作曲家について思いを馳せる。こうした経験は曲への理解を深くすると同時に、音楽への共感も導き出すと思います。

年が明けて1月から2月にかけて行なわれる実技試験。その成果を大いに期待しましょう!

中村洋子先生によるピアノ公開講座が開催されました。

2016年11月7日、川越キャンパスにて、作曲家の中村洋子先生によるピアノ公開講座が開催されました。

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中村洋子先生は、「無伴奏チェロ組曲第1~6番」「チェロ二重奏のための10の曲集」が、ベルリンの歴史あるリース&エアラー社より日本人作曲家として初めて出版され、ベルリンフィル首席奏者W.ベッチャーの演奏によるCDがリリースされるなど世界的に活躍していらっしゃいます。また、全国各地で講座を開催、著書も多数出版され、そのいずれも好評を博しています。

今回は本学の川越キャンパスにて講座が実現することとなり、在学生はもちろんのこと、多くの卒業生も聴講に訪れ、会場のスタジオBは満員の盛況となりました。

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今回のテーマは「愛らしくシンプルに見える『インヴェンション第1番』は『平均律第1番』も支配している」という、とても興味深いものでした。

中村先生は作曲家としてご活躍中であるのはもちろんですが、大作曲家たちの自筆譜についても詳しく研究し、それに関する著書も出版していらっしゃいます。今回は、J.S.バッハの自筆譜の書法に関するオリジナル資料を、わざわざこの講座のためにご準備くださいました。

『インヴェンション第1番』『平均律第1番』の自筆譜を注意深く調べることにより、そこに様々な音楽的な意味を読み取ることが出来ることを、とても分かりやすく具体的にお話くださいました。

大変親しみやすい曲集である『アンナ・マグダレナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集』についてもお話があり、作品の分析にとどまらず、J.Sバッハが家族をとても大切にしていたこと、また、アンナ・マグダレナ・バッハとの結婚式での来客への素晴らしいもてなし等、J.S.バッハのお人柄についてもお話がありました。

B.バルトーク、E.フィッシャーら、偉大な音楽家たちによる校訂版についても学びました。彼らがどのようにJ.S.バッハの音楽を読み取っているかについて知り、また、J.S.バッハのお人柄とも相俟って、彼がいかに楽譜を大切に記していたのかを理解することができました。

中村洋子先生は、自筆譜を探求し作品を分析することによって、演奏への多くのヒントを得ることができることを、具体的な例をあげてお示しくださいました。また、それによってピアノを弾くことや音楽を学ぶことの楽しみを得ることができるというお話は、学生たちの心に深く刻まれたことでしょう。

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